制御
「魔物討伐じゃないなら私は何をすればいいんだ?」
「まあ、討伐が目的ではないけど魔物が出たら倒さなきゃいけないからその時頼むよ、それ以外の難しい事は僕がやるから……、あっでもまたゴーレムにケンカ売るのはやめてよ?」
「そうか!わかった!!」
「元気な返事だが本当に分かったのか心配だな……」
「んじゃあいってきまーす!!!」
説明を受けるや否や颯爽とギルドから走り去ってしまった。
「あっ!ちょっ!荷物半分持ってよ!!!」
僕もカノンを追いかけ走り出す。
それだけ体力あるなら荷物も半分どころか全部持ってもらいたいところだ。
「ふふっ、お気をつけて~」
それから少しだけ走り、追い付きこそしなかったものの、門を出て少ししたところで何とか呼び止める事には成功した。
「なんだ?早くしないと日が暮れるぞ?夜になったら寝なきゃいけないだろ?」
「いい子ちゃんかよ……ってのはともかく、どれだけ走っても日暮れまでには目的地までたどり着けないだろうし、今日は道中にあった川のあたりでキャンプすることにするぞ」
「なるほど!分かった!」
元気な返事を返し、カノンは再び走って行ってしまった。
「先に到着したら魚でも捕って待っててくれよー!!!」
「分かったーーー!!!!!」
カノンはどんどんと見えなくなっていくが、今度は別に追う必要は無い。
なぜなら目的地を既に決めてあるからだ。
今まで見てきた限りでは、彼女は説明を聞かなかったり余計なことをしたりはするものの、頼まれたことは基本的にやってくれている聞き分けのいい子だ。
つまり彼女を御する第一の方法は、予めして欲しいことをお願いしておくことである。
川に着いた後にやることも言っておいたし、これでゆっくりと歩いて川まで行けるという寸法だ。
「さて……、忘れてたけど、ゴーレム倒してレベルはいくつになったのかな?」
歩きながらステータスウィンドウを確認する。
表示されたレベルは21だった。
ゴーレム1体倒しただけで10も上がっていた。
「うーん、極振り検証とかしてる余裕無いよなぁ……」
そもそもMAG極振りは神楽坂の頼みだ、追放された今、もうそんな事してやる理由もないだろ。
カノンの走りに付いて行くためにVITとAGIに振りたいところだが、調査中にどんなステータスが必要かはまだ分からない。
大量の魔物と戦うためにSTRが欲しくなるかもしれないし、強大な魔物を倒すために強い魔法を使う場面があるかもしれない。
今はまだ温存しておく方がいいか……。
とりあえず魔法の契約だけは済ませておくのもいいかもしれない。
「そういえば、ステータスリセットしたら習得した魔法も全部無かったことになるのかなぁ……、なりそうだよなぁ……」
この魔法書を売ってお金にすることも考えたけど、もしステータスリセットするってなって魔法の契約をし直さなきゃいけなくなったらもったいないしな。
わざわざこの魔法書ごと転送してくれて助かったもんだ、おかげでゴーレムも倒せたし。
そんなことを思いながら支給品の干し肉を齧り、川を目指す。
正直全然美味しくない。
早く稼いで普通の食事がしたいなぁ……。