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依頼

 それから2時間くらい歩いたり走ったりしただろうか、途中道が途切れたり森を抜けたり川を渡ったり地割れの溝を飛び越えたりと、やたらとアドベンチャーな道のりだったが、ようやく町が見えてきた。


 町と言うからそこまで大きなものを想像してなかったのだが、城があり城下町がある、一つの国として十分な大きさを誇っていた。


 関所は割とすんなり僕を通してくれた。


 カノンが関所の人と顔見知りっぽかったから融通を利かせてくれたのかもしれない。


 僕たちが歩いてきた土の道は次第に舗装された道になっていき、左右には民家が立ち並ぶ。


 アクセサリーや串焼き、骨董品のようなものを売る屋台などが点々と客寄せの声を上げていて活気が感じられる。



「ここが冒険者ギルドだ!」



 カノンはレンガ造りの大きな建物を指さす。


 人相の悪い人たちが出入りしていて、いかにもって感じだ。


 僕はカノンに連れられ中へ入る。



「こんにちわ~!」



 バンと扉を開け大声でやや場違いな挨拶しながら入室する。


 ギルド内の人たちの視線が僕たちに集まる。



「は……はじめまして……」



 勘弁してほしい……。


 僕はあんまり注目されるのに慣れてないんだ。


 そんな僕の手を引き、カノンはカウンターへ向かう。



「リッテ!ただいま!」

「おかえりなさい、カノンさん、ところでそちらの方は?」

「新しい冒険者だ!」

「そうでしたか、では受付用の紙を持ってきますね」



 カノンがリッテと呼んだ栗色の髪の受付嬢は羊皮紙とペンを持ってくる。


 話がサクサク進む感じ、カノンへの対応には小慣れてるのだろう。



「おまたせしました、こちらに名前だけ記入してください」

「わかりました……、あの、ちなみに僕今お金とか何も無いんですけど、登録料とかって必要だったりは……」

「いえ、大丈夫ですよ、登録だけならお金は必要ありません、冒険者というのはおおよそがお金の無い方たちが始めるお仕事なので」

「なるほど……」



 一文無しとしてはありがたいが、現状を再確認するとなかなか来るものがある。


 そうだ、宿に泊まるお金も食事をするお金も無いではないか。



「ちなみに金融機関とかってあったりはしますかね……?」



 僕は記入し終えた羊皮紙を受け渡しながら聞いた。



「無いことはないですが、多分信用的な面で貸してはくれないと思いますね」

「ですよね……、じゃあ何か簡単な依頼はないですか?」



 無いなら稼ぐしかない。


 元の世界のアルバイトほど楽ではないだろうが、とにかくやるしかないか。



「すみませんが、簡単なものの中で今日の分の依頼は全て出切ってしまってます、緊急依頼でない限り新しい依頼は次の日の朝貼り出されるので、今日新しく入る依頼は無いかもしれないですね」

「そうですか……、どうしようかな……」

「ところで、つかぬことをお聞きしますが、どうしてカノンさんとご一緒だったので?」

「あぁ、えっと、簡単に言うと、あの子とパーティーを組むために冒険者になった次第で───」



 カノンと出会った場面からの出来事をかいつまんで説明した。



「そうだったんですね、ちなみにカノンさんがどんな依頼を受けてあの場所に居たのかはご存じで?」

「そういえば聞いてませんでした」

「簡単に言うと、魔物大量発生の原因調査ですね、国からの公的な依頼なんです、多分……カノンさんは魔物大量発生という文だけ見て依頼を受けるや即座に走って出発してしまったんです、ちなみに依頼は達成報告も失敗報告もまだなので、まだ継続中という扱いです」

「つまり僕がパーティーを組むと僕も参加する必要があると」

「いえ、そこは自由にしてもらって構いません、私が言いたいのは、国からの依頼なので支給品がある依頼ってことです。カノンさん何も受け取らずに出ていってしまったので、言ってくれれば最低5日分の食料や装備は支給ができるんですよ、もちろんあなたもパーティーとして参加するならあなたの分も」



 説明読まずに依頼を受けて走って出ていくカノンの姿は容易に想像できてしまった……。


 リッテさんが言いたいのは、僕もその依頼に参加するなら、その未受け取りの支給品でとりあえず食い繋げますよって事だ。


 背に腹は代えられないか……。



「……わかりました、僕も行きます。カノン一人じゃちゃんと調査できる気がしないので……」

「はい、承りました、では用意するので少し待っててくださいね」



 運が良かったと言っていいのだろうか?


 とはいえ親切に教えてくれたリッテさんには感謝をしなければ。


 カノンが依頼を受けていたおかげで急場は凌げそうだが、依頼内容は言わば5日かけて魔物大量発生の原因を突き止めて来いというなかなかめんどくさそうなものだ。


 さっきから大人しい当事者のカノンの方を見ると、カウンター席でミルクを飲んでいた。


 ……僕も欲しい。

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