対話
そうして僕たちは広い応接間へと通された。
到着するまでにしばらく歩く必要があるほど敷地内は広かった。
その部屋にはおよそ漫画やアニメなどでしか見たことが無いような、広く長いテーブルや高級そうな椅子がずらりと並んでいた。
僕たちは国王たちと対面する形で座る。
それぞれ一杯ずつ紅茶が配膳され、卓上の茶菓子は自由にするようにと言われた。
皆まだ警戒心が高く、なかなか手を付けようとはしなかったが、クラス一番の食いしん坊な中園君が「美味い美味い」とパクパク頬張るものだから、それに釣られて手を伸ばす者がちらほらと出てくる。
しばらくすると段々と緊張も解けていき、いつもの雰囲気に戻ってきているような気がした。
それでも、クラスの代表として選ばれた3人は緊張を解くことは無く、王様たちと対面し神妙な面持ちを保っている。
1人目は葛木君、相変わらず国王と対面してても態度はデカい。
ちなみにその場所に座っているのは本人の意思ではないが、先程の戦闘での功績もあり、彼の威を借りるべく配置されている。
2人目は望月さん、真面目で成績も良く、品行方正という言葉がよく似合う図書委員長だ。
話の記録をするために生徒手帳とボールペンを手元に置いている。
3人目が神楽坂、昔からの僕の友人で生徒会長をしている。
責任感が強く皆からも頼りにされることの多い彼が、いつもの通りクラスの代表を買って出た。
「改めて、挨拶をさせてもらおう、私は第六十五代グランブルク国王、ウルガルド・グランブルクである、突然異界の地から呼び寄せたこと、重ねて謝罪しよう」
この発言で今この場所が異世界であることが確定したのだった。
それを聞いたクラスメイト達の反応は様々だった。
驚く者、不安そうにする者、目を輝かせている者、話を理解していない者、話を聞いていない者、茶菓子をおかわりする者。
かく言う僕は思案していた。
僕たちが置かれている状況はいわゆる異世界召喚と言われるものだ、ライトノベルなんかで何度も読んだことがある。
しかしまさか自分が当事者になろうとは思ってもみなかったが。
とはいえ気になるのはこの世界のシステムだ。
文明レベルや常識や政治など、僕たちはこれからそれらを解明、ないし適応していかなければならない。
やることは多いが問題ない、研究や検証、トライアンドエラーは僕の得意分野だ。
むしろ今すぐにでも色々と試してみたくてうずうずしてきている自分がいる。
「……ではこちらもまず挨拶から、僕は神楽坂勇斗と申します、手前が家名で後ろが名前です、他に人たちも紹介してると長くなるので今は置いておきましょう、僭越ながら今回は僕が皆の代表として話させていただきます、ただ方針の決定には皆で十分話し合う必要がありますので、それについてはお時間をいただければと」
「かまわぬ、貴殿らも気持ちを整理する時間が必要であろうしな」
神楽坂は生徒会長というだけあり、こういう目上の人たちと相対して話し合ったり大勢の前でスピーチしたりと、そういうシチュエーションに強い。
この場はとりあえず神楽坂に任せておけば大丈夫だという安心感がある。
「では単刀直入に、僕たちへの要求は何ですか?」
「随分と話が早いな、まあ悪くはない……、貴殿らを呼んだ理由は、この世界を滅ぼさんとする魔王を討伐するためである」
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