知恵
「お前ッ!!タルタロスさんをよくもッ!!!」
「まだ仲間のために怒れはするか。ならそれがいつまで続くか確かめてやろう。リン、貴様は下がっておれ」
「は、はいっ!」
奴は従者を後ろへ逃がす。
「逃がすという事はそれを妨害すれば貴方への妨害にもなるという事ですね!」
リタ君はその従者に対して弓を引いた。
たしかにその理屈は正しいかもしれないが、逃がしたというのは守るべき存在だからとイコールではない。
あの女はこちらに魔族が居ると知りながらボクらの前に現れた。
おそらく魔族相手に戦える自信があってのことだ。
そして実際あの女はリタ君の放った矢を素手で掴んで止めてしまった。
「なっ!?」
「その程度じゃ私には当たらないよ」
「よ……避けるならまだしも掴むとか普通じゃないのですよ!貴方本当に人間なのですか!!?」
「よく言われるよ。むしろ貴方こそそんなんで本当に魔族なの?」
奴ら悉く素手で対抗して、力の差を見せつけているつもりなのか?
いや、暇潰しなのだからそれどころか遊ばれているのか。
従者は矢を捨て、言われた通り男から離れた。
それを確認した奴は、自身を巻き込み魔法陣を展開する。
伏魔殿、今度はピンポイントではなく大規模に展開してきた。
これはおそらくレイ君をさらに瘴気で蝕むためだろう、この範囲ではリタ君の魔法でレイ君を退かすことは困難だ。
そしてリタ君をこれ以上強化してしまっても問題無いという判断の上だ。
奴自身は瘴気に侵されようともそれを攻撃として使う事ができる。
つまり奴にとっても自身を効果範囲に含むことはただの強化なのだ。
だが桑蓬の矢の修正複写はできた。
後はレイ君の近くに行ければ発動できる。
「レイ君、こっちへ……!」
駄目だ、大声が出せない……。
近くに居るリタ君に助けを求めよう。
「リタ君……、肩を貸してくれ。レイ君の所へ……」
「わ、分かったのです!少し辛抱してもらうのです!」
リタ君はボクを抱きかかえ、風属性魔法を使った加速でレイ君の所へ急行した。
揺れると傷に響く……。
「レイさん!お届け物なのです!」
「リタさん、タルタロスさん……、ダメだ、逃げててくれ!」
「逃げるわけにはいかないな……。主の窮地を黙って見ていろと?」
ボクはレイ君を捕まえる。
……この感触、もう胴回りまで変質し硬い鱗のようなものに覆われているようだ。
これ以上魔物化しては本当にマズい……。
「三人寄ったところで何ができる?文殊の知恵でも披露してくれるか?」
残念ながらボク一人の知恵だ。
「……空よ、魔を討て。桑蓬の矢……っ!」
「何っ!!?」
パズルゲームとか時々やりたくなってインストールするのですが、広告が出た瞬間アンインストールしてしまいます。