寛大
「……白衣のもようやく来たか、コソコソと準備をしていたようだが良い策でも思いついたか?なら存分に披露して見せよ」
「わざわざ待ってくれていたとは随分寛大なお方のようで。ところで一つ気になるのだが、どうしてレイ君を完全に変異させないでいるのかね?はたして完全変異した時の力を恐れているのか、それとも伏魔殿とやらは動く的には当てられないのかね?はたまたリタ君を巻き込んでしまいさらに強化してしまうのを防止するためか……」
「ちょっとタローさん!挑発してどうするんですか!!?」
「ほう、要するに貴様らの強化を中途半端に止めるのは、我の力量がその程度だからだと言いたい訳だな?あわよくば我の術でさらなる戦力強化を図っていると言ったところか。どうだ少年、仲間は貴様が更なる異形となる事を望んでいるようだぞ」
「お……俺は、この程度じゃ……!もっと力をよこせっ!!!」
「レイ!?ダメだ!」
「はぁ、やはり貴様の本性はそんなものか、醜い。……よかろう白衣の、寛大な我はその口車に乗ってやる」
皇帝は今一度、先程と同じ魔術を構える。
カノン君はそれを阻止せんと剣を振うが、利き腕ではない手で振っているせいか少し動きがぎこちない。
そんな剣など意にも介さず片手であしらわれている。
リタ君はボクが何かしようとしているのを察して手出しをしていない。
奴の使う「伏魔殿」とやらはおそらく周囲の瘴気を集約して個体に押し込める術だ。
効果範囲は魔法陣に触れている者。
発動後の魔法陣の移動はできない。
そのあたりまでは一度目の時点で推測できる。
奴はレイ君にのみ魔法陣を展開し、それを発動した。
「リタ君!風でレイ君を退かせ!」
「わ、分かったのです!ガストっ!!」
強風がレイ君を持ち上げ、魔法陣の外へ追い出す。
代わりにボクがその魔術を受けるため、陣の中へ入る。
「見え透いた策だな。だが寛大な我はその策にも乗ってやろう」
左眼の能力で瘴気を押し付ける。
対象はあの皇帝だ。
「我が自らの空を操れぬと思っていた訳ではあるまい?あるいはそうさせるのが目的か?」
そうさせるのが目的だ。
瘴気を操れるならば体内の瘴気をどうにかする魔術も知っているはずだ。
まずはそれを引き出させる。
「まあよい。空よ、魔を討て。桑蓬の矢」
「攻撃魔術だと!?」
奴は体内の瘴気を矢に作り変え具現化した。
まさか、瘴気の侵食から逃れるための魔術でそのまま攻撃に転じる事ができるとまでは想定していなかった……!
そしてその矢はボクの右目でも視認できる。
つまり瘴気だけでなく実体を伴う矢だ。
伏魔殿と違い、食らえば物理的なダメージが伴うだろう。
だが次の魔術を構えたボクは、おそらくその攻撃を回避することはできない。
「くっ……!火の元素、術を焼き写せ!リプリント!」
魔術を発動すると同時に、矢はボクの腹部へと突き刺さった。
バーガーキングのディアブロバーガー美味しいのでぜひ。
お高いですけど。