道楽
「青髪の娘も加勢に来たようだな。丁度いい、手応えが無くて飽いて来ていたのだ。だが、それはそうと貴様は何故我の術の影響を受けていない?」
「知るか!私は青髪じゃなくてカノンだ!レイを元に戻せ!!!」
「残念だが、魔物化は不可逆だ、諦めろ。そんな事よりカノン、貴様が魔物化しないのは何か耐性があるからか?空への耐性なんてそんなものが存在するのか?もしそうなら……」
「何ブツブツ言ってるんだ!私は諦めない!レイを返せ!!!」
「そうだな……、一つ条件を飲むならこれ以上この男には手出しをしないでやろう。カノン、我が妻ヴアルの側仕えとなれ」
「本当か!?……そばづかえってなんだ?蕎麦が喉につっかえるのか!?」
「カノンさん!そんな言葉に拐かされちゃダメなのです!!!」
「か、角が沸かされるってどういうことだ!!?」
「……阿呆なのかこの娘は?」
いいぞ、会話でも何でもいいから時間を稼いでくれ!
「そ、そもそもカノンさんはルブルム王国の騎士様なのですよ!こんな事して国際問題になっても知らないのですよ!」
「この娘がノヴァの所の騎士だと?」
「ていうか、貴方こそそもそも誰なのですか!?」
「我を知らぬと申すか。まあよい、名乗ってやる。我が名はジオ・リベルグ、この国の八十二代皇帝である」
「ななっ、なんでそんな人がこんなところに居るのですか!!?」
「暇潰しだ。それ以外に理由は無い」
「あ……貴方は暇潰しでこんなことをしたのですか!?リタだけならともかく、レイさんをこんな風にする必要はあったのですか!?」
「魔族討伐に一般人を巻き込んではならないだろう?だが魔物であれば話は別だ。故にカノン、我は貴様を殺すことはせん。貴様が騎士であるというのなら丁重にノヴァの所へ送り返してやろう」
これがただの道楽だと言うのか?
……いや、ボクに奴を責める資格は無い。
ボクだって敵対した人間を実験材料にしたことがあるのだ。
同じように魔物化させ、処分した。
それが倫理に反した事であるのは、今のボクは弁えている。
だからこそ、ボクが止めなければならない。
……レイ君はおそらくまだ変異の途中だ。
瘴気に蝕まれまともな思考ができない状態だ。
一時だけでも瘴気を取り除く方法があれば、もしかしたらそれが打開に繋がるかもしれない。
何よりこのまま侵食され続けては最悪の事態も起こりかねない。
一つだけ策を思いついた。
だが、そのためにはまず奴を口車に乗せなければならない。
成功するかは分からないが、やってみるしかない。
パッコヤンは可愛いですね……。