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虚空

 奴は「(くう)」と言った。


 空とは魔術を構成する五元素、「火」「水」「風」「地」「空」の中の一つだが、ボクの知る限り存在するとだけされていて、術式はまだ開発されていなかったはず。


 隠居している500年の間に研究が進み空の術式が開発されていたのか?


 僕は空の元素の知識を有していない。


 故にボクは、自らの異常を感知するまで術式の解析を優先してしまった。


 地面に穴を開けた時は物質を無に帰す魔術だと思った。


 空の元素は虚空、つまり電離気体を意味する火、気体を意味する風、液体を意味する水、固体を意味する地の実体を有する四元素と違い、実体のないものと仮定されていた。


 ならば実体を無に変換する魔術と考えて辻褄が合う。


 二度目の魔術をボクらに向けて使用した時は一瞬身構えたが、「戦う動機を与える」と宣った奴の口振りからするにボクらを消滅させようとしたわけでは無い事は推測できた。


 直接何かをしてくるつもりではないと思ったせいで油断してしまった。


 数瞬遅れて異変に気付く。


 もしや空というのは瘴気を意味しているのではないかと。


 その証拠に奴が魔術を使用してから体内の瘴気が異常な濃度になっているのをボクの左眼は捕らえた。


 ボクだけではない、リタ君やレイ君もだ。


 カノン君だけは何故か無事のようだが、今はそんなことを気にしている場合ではない。


 この濃度では即座に魔物化が発症してしまう。


 元々魔族のリタ君はその力が増すだけで問題は無い。


 ボクはこの左眼で瘴気をリタ君に押し付ければいい。


 だがレイ君だけはボクにはどうしようもないのだ。


 早く逃げてくれという願いも虚しくレイ君はその姿を異形に変えてしまった……。


 もはやボクの声が届いているかも分からない。



「ようやくやる気になったようだな。相手をしてやろう」



 自らけしかけておいてよく言う。


 魔物化したことで幾分かレイ君の身体能力は向上しているはずだが、戦うには相手の力量が未知数すぎる。


 男は魔術を停止させ、レイ君を迎え撃つ構えを取った。


 武器は手に取っていない。


 まさか、素手で戦おうというのか……?



「乱暴な攻撃だな。武術の嗜みは無いのか?」

「引き裂くのに技なんて必要ない!」



 駄目だ、攻撃が全ていなされている……。


 無闇矢鱈に殴りかかって勝てる相手ではない。


 相手も止めろと言って止めるような輩ではない。


 この無益な戦いをどうにかしなくては……!



「レイ!やるなら私も戦うぞ!」

「ま……待ちたまえカノン君!君はまだ怪我が治っていないだろう!」

「右手以外は動く!」

「そういう問題では……!」



 制止を聞かずカノン君も行ってしまう。


 フィジカルで劣るボクは口を出すくらいしかできないのだが……、カノン君はボクの言葉では止まらない。



「リタ君!2人のカバーを頼む!」

「むむむ無茶言わないで欲しいのです!相手の魔術のおかげかなんかよく分からない力が湧いてくるのですが、それでもあんなのに勝てない事くらい分かるのですよ!」

「勝てとは言っていない!護衛なのだから護ってくれ!とにかく今は策を考える時間が欲しい!」

「うぐ……あぁ~もう!!!なんでこんなことになっちゃったのですかぁああああ!!!」



 そう言ってリタ君も弓を持って渋々出陣してくれた。


 どうしてこんなことになってしまったのかはボクも聞きたい。


 だがそんな事を愚痴ってもどうしようもない。


 今必要なのは原因の究明ではなく打開策の立案だ。


 3人でなんとか持ち堪えていてくれ……!

急に視点変わって申し訳ないです。

ちょっとの間タルタロスさん視点で進行します。

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