妙案
カノンに服を着せた後、女湯でのぼせたリタさんの救助をする。
ついでに人耳の部分がどうなっているのかが気になったので見てみたら普通に毛が生えているだけだった。
違和感がすごい。
骨格とかも上の方にある耳に対応したものになってるのだろうか?
そのあたりは解剖しないと分からないだろうが……、さすがにそこまではできない。
ネズミ耳もちゃんと軟骨っぽい感触するし、ちゃんと存在する生物を模して変質しているのだろうか?
「んあっ!?」
「あ、起きました?」
「みみみ耳をそんなこねくり回さないで欲しいのです!デリケートな部分なのですよ!!?」
「あっ、す……すみません」
たしかに無許可に触りすぎた。
リタさんは僕から距離を取るように逃げた。
その後着替えを終わらせ、僕とリタさんも受付のホールへ戻った。
「レイさん、リタ、妙案を思いついたのです!」
「妙案?あぁ、経営の?」
「そうなのです!レイさんたち、リベルグ帝国に行くのですよね?でしたら護衛兼御者としてリタを雇ってほしいのです!」
なるほど、リタさんの実力は僕も知ってるし、怪我をしているカノンに戦闘はさせられない。
馬車を借りて僕たちだけで行こうと思っていたが、前みたいに魔物が何体も出てきたら僕たちの手に余る可能性が高い。
一応タルタロスさんがそうなった場合の対策も考えておいてくれているらしいが、保険も兼ねて戦闘も御者も両方できるリタさんが居ればたしかに心強い。
「でも、1ヶ月もお店を空けちゃって大丈夫なんですか?」
「水を全部抜いてしまえばメンテナンスの必要も無いので1ヶ月くらいなら大丈夫です!従業員もリタだけなので心配ないのですよ!」
タルタロスさんに視線を送るも、好きにしたまえと返される。
「ちなみに報酬はどれくらいで?」
「えっとですね、難しいお願いであるのは重々承知なのですが、できれば報酬の代わりに融資をして欲しいのです……。レイさんのアドバイスを貰って、たしかに場所を移転した方がいいと思ったのですが、この店を売り払ってもおそらく新店舗開業の資金には届かないのです。も、もちろん返却の際には色を付けて返すのですよ!」
「融資って……、一応僕たちも無尽蔵にお金があるわけじゃないので、金額が分からないとなんとも……」
「た、たしかに……、でも見積もりはちょっとすぐには出せないのです……。じゃ、じゃあ帰ってきてから見積もりを出すので、できそうならそっち、もしダメだったら一日粒金貨1枚の計算で報酬を頂ければありがたいのです……」
「まあそういう事なら……」
日当およそ1万円というのは結構破格だとは思う。
往復2週間程度で14万になるが、命を張る仕事になるだろうし、おそらく日中はずっと仕事をしてもらうことになるのだろうから、時給に換算すると多分かなり安い。
それだけ切羽詰まってるのだろうか……。
とりあえず僕はリタさんの申し出に乗ることにした。
出発の予定は明後日、今日明日で準備を終わらせ、当日は昼頃に王国の南門で待ち合わせることになった。
椅子のカバーがおよそ30%禿げました。