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女湯

 一波乱あったが、ようやく3人でゆっくりと湯に浸かることができた。


 温度も丁度いい。


 だが色々気が散って純粋に楽しめない……。



「カノン、せっかく広いんだからもう少し離れないか?」

「えー?やだ~」

「……こういうことするのは僕だけにしろよ?」

「レイだけ特別だもん」



 そういう事を恥ずかしげもなく言えるのがカノンの強い所だ。


 こうも全幅の好意と信頼を向けられるとどうしても愛おしく感じてしまう。


 僕をたらしこもうとしているとかではなく、本心から言っている事を知っているから尚更だ。


 まあそれはそれとして、カノンを後ろから抱きかかえるこの構図は色々と危うい。


 カノンはお構いなしに僕を背もたれにしているせいで完全に当たってしまっている。


 「当ててるのよ」もとい「当てさせてるのよ」状態だ。


 それでもカノンを無理矢理引き剥がすなんて事はしたくない。


 カノンのそういうところも全部ひっくるめて、彼女を伴侶として受け入れたのだから。



「お風呂きもちいいな、レイ」

「あ、ああ」

「冒険者やってるときもこういうとこあればよかったのに」

「そうだなぁ……」



 たしかに、多分大衆浴場を建てるべきは、力仕事の多い冒険者の集う王国南東の冒険者ギルド付近にすれば良かっただろう。


 後でその事もリタさんに進言しておこう。


 店を南東の方に建て直す資金があるかは知らないが。


 そんなことを思いながら入浴を楽しんでいると、浴場入り口の引き戸がガラガラと開いた。


 湯船の淵に座っていたタルタロスさんは咄嗟に湯の中に身を隠す。



「皆様、湯加減はいかがです?せっかくなのでお背中流すのですよ!」

「り、リタさん!?」



 噂をすればというかなんというか。


 ていうか店員だとしても貸し切りで使ってる場所に入って来ちゃダメだろ!?



「裸の付き合いは親睦を深めるなんていうのを聞いた事があるのです!騎士様に太客になってもらうべく媚びを売りに来たのです!」

「生々しいな!!?」

「権力者には媚びる、強者にはへつらう、長いものには巻かれるのがリタの主義なのです!」

「いやいやそれよりも男の僕が居るんだしせめて隠してくださいよ!!?」

「恥ずかしがること無いのですよ!リタも男なのです!」

「はぁ!?」



 そう言われて目を向けると、たしかにリタさんには男のそれが付いていた。


 どうやら今までリタさんの事を女の子だと勘違いしていたようだ。


 思い返せばリタさんは一度も自分が女の子だと言った事は無かった気がする。


 容姿が極めて女の子に近い、俗に言う男の娘だったという訳だ。


 ……ん?


 ここ、女湯だぞ……?



「「尚更入って来ちゃダメだろ!!?」」



 僕とタルタロスさんの声が浴場内で共鳴した。

最近体がカフェインに弱くなってきてる気がします。

眠れないとかではなく体調的な意味で。

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