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改装

 開くと鈴の鳴る扉から店へ入る。


 この国では珍しい木造建築だ。


 焼きたてのクッキーや紅茶の香りに誘われて入った店だが、淡い光で照らされる店内の雰囲気も良いしこれは当たりの店だろう。


 僕たちは少し広めのテーブル席に座り、僕は紅茶とクッキーを、タルタロスさんは紅茶を、カノンはココアとフルーツジュースとサンドイッチとクッキーとケーキ3種とアップルパイを頼んだ。


 ……頼みすぎだろ。


 せめて食べ終わってから追加で頼めばいいのに。



「タルタロスさん、食べ物はいいんですか?」

「ああ、必要以上の栄養は摂らないようにしているのだよ。ここには味のあるものが多いからね。意識して制限しなければ栄養過多になってしまう」

「味の無いものの方が普通みたいな人貴方だけですからね……?ていうかただでさえ細身なのにそんなダイエットみたいなことして大丈夫なんですか?」

「必要分の栄養は摂っているのだからダイエットでは無かろう?」

「それはそうですけど」



 そういえばこの人、意図して味の無いものを作って食べていた人ではあるが、別に味のあるものが嫌いという訳ではなく、味という娯楽を排することで好き嫌いに依存せず栄養管理を徹底している……みたいな事言ってた気がする。


 って事は気を付けてないと好きな食べ物はついつい食べ過ぎちゃうってタイプの人なのか。


 そう思うとなんか可愛らしいな……。


 紅茶を嗜みながらリベルグ帝国に行ったら何をしようか話し合ったり、カノンの食事を手伝ったりしていると、扉の鈴が鳴り誰かの入店を報せた。


 入って来たのは翡翠色の髪とハンチング帽の女の子。


 この前僕とタルタロスさんをルブルム王国まで運んでくれた商人のリタさんだ。



「ややっ、どこかで見た顔と思えば!いつぞやのお金払いのいいお客さんじゃないですか!相席してもいいです?」

「どうぞ、2週間振りくらいですね。あれから商は上手く行ってますか?」

「いやはやそれはもう!まさに暗礁に乗り上げているところなのです!助けて欲しいのです!!」

「い、一応聞くだけ聞きますけど……、どんな感じで……?」

「レイ君、あまり首を突っ込まない方がいいのではないかね?」

「ど、どうか話だけでもっ!!!ほら!リタたちの仲じゃないですか!」

「いやそんな深い仲ではないとは思いますけど……」



 相席を許しちゃったし、とりあえず話だけは聞くことにした。


 どうやら荷を売った利益を元手に商業地区の空き家を買い、改装して店にしたそうだ。


 その話に辿り着くまでの、荷を売るために奔走した話だけで20分かかったのでそれは割愛する。


 本題は多分その店が上手く行ってないって話だろう。



「それで、何の店を始めたんですか?」

「よくぞ聞いてくれたのです!この国を練り歩いて、これだ!と思うものが一つあったのです!それが大衆浴場!東の漁港町、ケラス港では誰しも一日一回は利用する事を見て知っていたので、この国に来て大衆浴場という競合店が無いと知った時はこれしかない!となったのですよ!」

「それが予想以上に売れ行きが悪いと……」

「そうなのです……一体何故なのですか……」

「普通に考えて文化の違いだろう。この国の人間は湯に浸かるという文化が浸透していない、あるいは見知らぬ誰かと共に湯に浸かるというのが普通ではないという認識なのではないかね?まあボクもこの国に来て浅いから正確なところは知らないが」

「ハインリーネ様の屋敷にはお風呂があったので、一応お湯に浸かるっていうのは認知としてはあると思います。ただ、そういった水を大量に使うっていう贅沢はお金のある人だからできる事で、それができる人はそもそもハインリーネ様みたいに実家にお風呂があると思うんですよ。それで、商業地区は多分お金のある人がほとんどだと思うんですよね。つまり……」

「つまり?」

「お風呂に入るためにわざわざ大衆浴場に行く人が商業地区にはほとんど居ないんじゃないですか?」

「あ゛あ゛~っ!やっちまったのです!!!」



 リタさんはガンッとテーブルに頭を打ちつけたのだった。

メイドインアビス全巻買いました(有言実行)

ゆっくり読みたいと思います。

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