討伐
それから何度かガキィィンと、おそらく剣を打ち付けてるであろう音が聞こえ、しばらくしないうちにゴーレムは糸が切れたかのように地に伏した。
ゴーレムの中からぴょいと少女が飛び出す。
「いや~、長く苦しい戦いだったな!」
「コア叩き割っただけでは?」
「私がここまで連れてくるのにどれだけ走っていたと思ってる!」
「頼んでないし僕巻き込まれただけじゃん!」
まったく、とんだハプニングだった。
絶対レベル11で遭遇しちゃいけないモンスターだろ。
魔法書持ってて助かったな……。
「そういえば自己紹介がまだだったな、私はカノン!この剣は聖剣トリムだ!」
「剣の紹介までする必要ある?……僕は篠原励、よろしく……」
「ならレイと呼ばせてもらうぞ、私の事はセンパイと呼びたまえ!」
「なんでだよっ!」
「ゴーレムにとどめ刺したの私だし」
「ゴーレム討伐の称号か何かなのか……?」
もしそんなシステムが存在するなら称号でステータスにボーナスがあったりするかもしれないけど……、なんか彼女がテキトー喋ってるだけな可能性の方が高そうだし気にしなくていいか。
「普通にカノンさんでいいかな?」
「え~、なんか気持ち悪いからさん付けじゃなくていいよ!ところでレイはどうしてこんなところに居るんだ?」
「あぁ……えっと、色々あって遭難してる最中なんだ……」
どうも心理的距離感が近くてどぎまぎする……。
よく見れば動きやすさの為か衣装は肌が多く見えてるし、小柄だが胸もまあまあある。
歳は僕よりちょっと下だろうか。
青髪のツインテールとくりっとした青い瞳がより幼さを際立たせている。
言動も幼いというか、勢いで喋ってる感じが年相応っていう印象である。
逆に何でそんな子がこんなところでゴーレムにケンカ売ってたのかが気になる。
が、今はそれよりどこかの町まで行って安全を確保したい。
「どこかに町とかはないかな?できれば案内して欲しいんだけど……」
「わかった!じゃあついてきて!」
そう即答すると、僕が道を進んでいた方向へダダダダダダダと走っていく。
どんだけ元気なんだあの子は……。
「ちょっ!待って!走る必要ある!!?待ってって!!!」
カノンを追いかけて僕も走る。
それだけ体力があるならゴーレムからも逃げきれたんじゃなかろうか、やっぱりあのゴーレム討伐は完全にとばっちりを食っただけでは?
しばらく走ったところで僕がバテたことに気付いたのか、ほぼ見えなくなっていたカノンが走って戻って来た。
「大丈夫か!?もしかしてゴーレムの攻撃で怪我してたりとか……」
「い……いや、怪我はしてない……、ただ……運動はそんなに得意じゃないから……、普通に歩いていこうよ……」
息も絶え絶えな僕を心配してくれているのだろうが、あれだけ走れるのは前提としているあたり、やはり僕と常識がズレている気がする。
もしかしてステータスをVITに極振りでもしてるのだろうか……?
「え~、しょーがないなぁ……」
カノンは僕に合わせて歩き始めてくれた。
そわそわと左右に蛇行してるあたり本当に落ち着きがないが、聞き分けの無い子ではないのだろう。
それにしてもやっぱりどうしてそんな子がゴーレムが居るような場所に行ってたのかが気になる。
話すこともあんまり無いし聞いてみることにした。
「ところでカノンはどうしてゴーレムなんかにちょっかいかけるようなことしたんだ?」
「そりゃそこにゴーレムが居たからな!敵は全部倒す!」
そう言ってガッツポーズをするが、あんまり質問の答えになっていない……。
「ゴーレムが居た方向に何か用事があったのか?もしそうなら案内させちゃって悪いな」
「気にするな!困ってる人を助けるのが勇者への第一歩だからな!」
「勇者……」
「今は冒険者だけど、いつかみんなに認めてもらって勇者になる!それでいつか魔王を倒す!」
そういえば国王たちが僕たちの事を勇者とか呼んでた気もする。
魔王を倒すための人の事を勇者と言うのだろうか。
「でも魔王はこの世界の人たちじゃ太刀打ちできないくらいに強いって聞いたけど……」
「心配するな!私のご先祖様は魔王を倒した勇者らしいからな!勇者の子は勇者に決まってる!」
何……?
先祖が勇者だって……?
「ちょ!ちょっと!その話詳しく聞かせてもらえないかな!?」
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