要望
「レイ君はどこの部署に入りたい?できる限り要望は聞くようにするけど、現実的な所は無難に第一騎士団か魔法か魔術に特化したいなら第三騎士団だね。カノンちゃんと同じ第五騎士団は正直言って実力不足だ。あそこは単独で魔族と渡り合える実力があることが最低ラインだからね。第二騎士団は言わずもがな、第四騎士団は君には不向きだと思うし、魔術研究機関にはオーフェン君が居るしね」
僕とオーフェンさんの仲の事まで知っているのか。
いや、王宮関係者だしそれぐらいは知っててもいいか。
「入るならまあ、第一騎士団ですかね。ハインリーネ様とは面識がありますし」
「だよねぇ。ちなみに君がやってるダイアンちゃんとの稽古はこれから騎士団として正式に受けることができるから安心してね。その代わりに君たちに一つお願いがあるんだ。入団してからしばらく、午後の間ちょっとだけ手伝ってほしい事があってね」
「手伝ってほしい事……?」
「ああ、君たち……特にタルタロスちゃんにしかできない仕事なんだ。……瘴気を操れる君にしか」
「ほう?」
ノヴァ様はどうやら魔術とは別に瘴気に関して研究をしているらしい。
その手伝いを頼んできたのだった。
タルタロスさんは別にその提案に乗ってもいいとのことで、僕たち3人は入団後しばらくはノヴァ様のところにお邪魔する約束になった。
その後、魔法についての話をしていたらカノンがうとうとし始めたので、この日はそれだけで切り上げた。
お手伝いの詳しい内容に関してはまたその時に話してくれるそうだ。
その説明を受けた上で、またその時に手を貸すかどうか選んでいいと言う。
僕は寝てしまったカノンを背負い、タルタロスさんとその事について話しながらライアンさんの宿へ戻る。
「正直、なんかあの人胡散臭すぎません?」
「ボクも概ね同じ感想だ。だが、奴が瘴気に関してどこまでの知識を有しているのかは気になるところだ。ボクが有り余る時間で研究してきた内容も半分は瘴気についてだ。それについて意見を交換できる存在が現れたのは、個人的にはありがたい事だな」
「……そういえばちょっと思い出したんですけど、僕たちが初めて会った時、タルタロスさんは僕とカノンからは瘴気が感じられないとか言ってませんでしたっけ?僕はまだこの世界に来てあんまり経ってないので蓄積が少ないのは分かるんですけど、この世界生まれのカノンも蓄積が少ないっていうのはどういう事なんですか?」
「原因は詳しく調べないと分からない。ちなみにカノン君から感じる瘴気は、少ないのではなく無いのだよ。これはもはや個人差の域を出ている。その事も後々調べさせてもらうつもりだったが……、瘴気の研究にカノン君も呼んだあたりその事も見透かされているのかもしれないな」
「胡散臭いですが、悪い人ではないとは思うんですけどね……」
悪い人だとは思わないが得体の知れなさがすごい。
ただ実力主義のこの国で王様をやっているという事は、それだけ騎士団の人たちからも信頼があるという証拠でもある。
僕たちの上司となるハインリーネ様やリーヴァ様にも話を通すと言っていたし、別段やましい事とかは無いのだろう。
気にしすぎも良くないな。
メイドインアビス単行本、とりあえず全巻買おうと思います。