敷地
「あとで書類を渡すから、とりあえず署名だけお願いね~。それじゃあ最後にレイ君、って言っても特に公的に何かをあげたりするわけじゃないけどね。個人的に興味があったんだ」
「僕そんな大した活躍してないですけど……」
「地属性魔法をよく使うって聞いたよ。実はこう見えて俺もよく使うんだ、最近はあんまり実戦が無いから使ってないけど、地属性って響きが地味なせいか使う人が居なくて寂しかったんだよね~。だから君と魔法についてちょっと語らいたかったんだ」
「語らうって程詳しいわけでもないですが」
「まあまあ、もう食事の席も用意しちゃってるんだ。俺と君たち3人だけだから気兼ねなく話せるよ!」
「まあ……、僕たちは大丈夫ですけど、ノヴァ様的には大丈夫なんですか……?自分で言うのもなんですけど、カノン以外は出自の怪しい人間ですよ?」
「大丈夫大丈夫!君たちはそう言う事しない子だって知ってるし、もし戦う事になっても君たち3人相手なら余裕で勝てる。伊達にこの国で王様やってないからね」
勝てないだろうという事はなんとなく分かっていた。
いわゆる勘だが、ハルクを見た時とは別ベクトルの強さを感じる。
この飄々とした態度は、もしかしたら本人の自信の表れなのかもしれない。
「という訳で、楽しみは後にとっておこう。リーヴァちゃん、書類の提出が終わったらカノンちゃんを案内してあげて」
「あいよ」
僕たちは書類にサインをした。
カノンは物理的にペンを握れないから僕が代筆した。
魔導契約をするためのサインではなく、単純に書類として記録を残すための書類のようだ。
サインをした3枚の書類はハインリーネ様がどこかへ運んで行った。
そうしてカノンはリーヴァ様に連れられ、これから所属する第五騎士団の団員たちへ顔合わせに行く。
もちろん僕とタルタロスさんも付き添いで回った。
新人のカノンは思っていたより歓迎されている様子で、元々の図太さもあってか結構すぐに団員たちと打ち解けていた。
その後は、結構な広さのある王宮の敷地内を案内されながら見回る。
敷地の4割近くは寮となっていて、団員が寝泊まりしているそうだ。
とは言っても騎士団全員を寝泊まりさせているわけではなく、ハインリーネ様のようにしっかりと家に帰っている人も多いという。
ちなみにリーヴァ様含む第五騎士団のほとんどはここで寝泊まりしているようだ。
職場が近い便利さもあるが、第五騎士団は元々あまり裕福ではなかった者が多いらしく、タダで寝泊まりできるとあって貧乏性を発動したのだとか。
もしカノンと一緒の部屋で寝泊まりできるのなら、ここに住まわせてもらうのもいいかもしれない。
そして敷地の3割は魔術研究機関が占めていて、2割が修練場、残りの1割が玉座を含む倉庫やその他雑多な役割の施設なのだという。
玉座の間があのサイズだったことが頷ける、色々と切り詰めた作りだった。
そうして案内が終わる頃には日が沈みかけていて、僕たちは王様と会食をするために再び玉座の間へと戻って来たのだった。
6畳って人が一人住むには狭くないですか?
机とかベッドとか本棚とか置いたらもうストレッチするスペースすら無いですよね。
都会だとこの狭さでも住むだけで月何万もかかるので貯金とかできる気がしませんね。