王様
案内の兵士に連れられ、応接間のような一室に入る。
そこには既にハインリーネ様が待っていて、軽く説明をしてくれた。
どうやら僕たちは王様にお呼ばれしているらしい。
元々そういう予定ではなかったようだが、僕たちに興味を示した王様が「会ってみたいからついでにこっち呼んで」と仰ったそうだ。
なんかノリが軽いな王様……。
「それじゃあ、ここからは私が玉座まで案内するよ」
「あっ、はい」
ノリは軽いが玉座なんて仰々しい単語が出てくると無駄に緊張してくる……。
僕はカノンにあまり失礼な言葉使いをしないようにお願いし、ハインリーネ様に連れられ大きな扉の前に立つ。
扉の前に居る2人の兵が扉を開くと、グランブルク王国で見た玉座の大広間よりは一回りこじんまりとした部屋だった。
玉座の間というより大きめの会議室のようで、玉座はあるものの、手前には大きなテーブルとそれを囲むようにいくつかのイスが置いてあり、その内の一つには既にリーヴァ様が座っている。
玉座に座っているのは赤髪短髪で飄々とした雰囲気の男性だった。
僕たち3人は促されるままにイスに座る。
「陛下、こちらがタルタロスさん、レイ君、あと予定にはありませんでしたが新騎士団員のカノンちゃんです」
王様の前でも敬称はそのままなのか。
そういう距離感で大丈夫なのか?
「おーけー、カノンちゃんともいずれ会う予定だったし、前倒しになる分には問題ないさ。じゃあとりあえず自己紹介でもしようか、俺って騎士団より影薄いから知らないかもしれないしね……。一応この国で王様やってる、ノヴァ・ルブルム・イーデンハルトだよ。あ、名前にルブルムって入ってるけど、これは王様になってから付いた名前だから元一般人なので悪しからず~」
軽っ!
なんだこの軽さは、元一般人だからだったりするのか?
親しみやすい感じはあるが、気が抜けて粗相でもしそうで逆に怖い。
「……ご紹介の通りボクはタルタロスだ。この間冒険者になったばかりで……」
「あぁ、君たちの事はちゃんと把握してるから大丈夫だよ。この国の事はだいたい知ってる。なんてったって王様だしね」
見かけによらず勤勉なんだろうか。
……いや「見かけによらず」なんて不敬極まりないな。
気を付けないと……。
「ちなみに、別にタメ口で話しても大丈夫だよ。ハイン君は立場とか気にする子だから陛下なんて呼び方してるけど、王!でもノヴァちゃんでも我が君でも何でもいいからね!」
……なんだろう、この人のノリ、苦手かもしれない……。
「それじゃあそろそろ本題に入ろうか。まずはタルタロスちゃん、君は先の魔族による侵攻において、魔族1体の討伐と、分身の能力を持った魔族の対処を買って出てくれた。その功績を称えて、君個人に金貨3枚を謝礼として贈呈しよう。まあ君の場合はお金とかに興味ないだろうけど、仲間の為とかに使ってくれ」
「……どうも」
タルタロスさんも微妙に眉間にしわが寄ってるし、もしかしたらこの雰囲気に付いて行けるのはカノンだけかもしれない……。
ワンダーアキュート実装されたら課金します。