撤退
「あらごめんなさい、勢い余ってルーナのお馬さんを奪ってしまいましたわ。タルティちゃん成分は補給できたことですし、早速私たちは南チームの様子を見に行くとしましょう。ルーナ、引き続きお二人の事よろしくお願いしますわ」
「はい……ですがお姉様、様子を見に行く必要は無さそうです」
ルーナさんがそう言うと、南方面の茂みから3人の隊員が現れた。
「あら、丁度良かったですわ。では報告を」
「はっ!南に敵の姿は無く、第五部隊の方々が哨戒中でした。さらにその後方、南西方面には我々騎士団の防衛拠点が設置してあり、そこで第一騎士団団長より言伝を預かってまいりました」
「ハインリーネ様は何と?」
「現在戦況が膠着状態、負傷者も多く、その上トラブルも発生中。戦略会議を行う為、第二部隊は総員撤退せよ。とのことです」
「分かりましたわ。全員に撤退を開始すると伝えてくださいまし。その後、防衛拠点までの先導をお願い致しますわ」
「はっ!」
3人は後方の部隊の方へ駆けて行った。
「やはり他の部隊もあの剣山のトラップに手をこまねいているのでしょうか……」
その後撤退の準備ができ、アイネス様はタルタロスさん持って馬車へと帰って行った。
南に派遣していたチームを先頭に、ハインリーネ様達の居る防衛拠点へと急いだ。
しばらくして目的地へ到着すると、ハインリーネ様とフレーマ様がそこで待っていた。
「あら、リーヴァ様はいらっしゃいませんの?」
「リーヴァさんは現在トラブルの対応中です。それにしても……探知した第二部隊の人数が何故か多かったからもしやと思っていたけれど……、やっぱりレイ君も来てしまっていたようだね……」
「まったく、一般人を巻き込む云々言っていたのはどこの誰ですか……」
「ちゃんと護衛は付けて傷一つ付けておりませんわ。それに後方の敵排除のお仕事もきちんとこなしていますわよ?」
「そう言われるとまだこっちを片付けられていない私たちとしては弱い所ですけど……。むしろ今はレイ君が来てくれてよかったとも思っているよ……」
ハインリーネ様はは僕の方を見て言った。
僕に何か用事でもあったのだろうか?
なんて楽観的でいたのだが、ハインリーネ様から衝撃の情報を伝えられる。
「2つあるトラブルのうちの1つなんだけれど……、今最前線にカノンちゃんが乱入してしまっているんだ」
「えっ……?」
自分のやる事は済んで、あわよくば対魔族戦を観戦して王国へ帰ろうと、そんな浅ましい考えでいたことを大いに反省した。
終わったつもりでいたせいでカノンが目を覚ました時の事を忘れてしまっていたのだ……。
電車音痴なので初めての駅に行くときはほぼ100%電車を乗り間違えるので、最低でも30分はマージンを取って電車に乗るようにしています。