心地
「今のはフォリアの声!!北側のチームに何かあったようですわ!テル、ニーニ、メリッサは私に付いて来て下さいまし!他の子は待機!ルーナ、お二人を頼みましたわ!」
「「「はっ!」」」
アイネス様はその悲鳴を自分の隊の者の声だと聞き分け、自身を含めた4人編成で北側のチームの様子を見に行った。
一体何があったのだろうか……。
「万が一に備えお二方は騎乗しておいてください。もし危険だと感じたら構わずお逃げください。レイ様、タルティちゃんをよろしくお願い致します」
「は、はい」
そう言ってルーナさんからタルタロスさんを受け渡される。
ゴスロリ衣装のタルタロスさんを抱き上げると、身の軽さも相まって本当に人形でも抱えてるような気分になってくる。
「レイ君、なにも君まで律儀にボクを抱きかかえないでもいいのだが」
「ああ、すみません、意外と抱き心地良くて……」
「ほう、ボクの抱き心地が?」
「いや……その言葉のまま言いふらさないでくださいよ?」
僕は軽口を叩くタルタロスさんをそっと下ろした。
タルタロスさんは自分の足で馬の方へ歩いて行く。
その様子を見て分かったが、歩くたびにパカパカと足音を鳴らしていて、靴のサイズが合っていなかったようだ。
もしかしたら、ずっと抱きかかえられて運ばれていたのは靴擦れを起こしてしまう可能性を考慮しての事だったのかもしれない。
……そう考える事にしておこう。
「ルーナ君、馬を1頭借りてもいいかね?」
「もちろんです。私の馬をお使いください」
僕はそのまま乗って来た馬に跨り撤退の準備だけは整えておく。
しばらく待っているとアイネス様たちが戻って来た。
人数は7人。
一応誰も欠けていないようだが……。
「怪我人ですわ。フォリアを2号車に乗せて治療を、ティアナに頼めるかしら」
「はっ!」
「ルーナ、南に向かったチームは?」
「まだ帰ってきていません」
「そっちも心配ですわね、後でそちらも見に行きますわ。他の手の空いている子は集合してくださいまし!」
アイネス様が招集を掛けると、隊員たちがずらっと整列する。
「偵察結果を伝えますわ。北方面に敵本拠地と思われる場所を発見。ですが、特定の範囲内に入ると地面からいくつもの刃が出現し攻撃してくるようですわ。魔術か能力かは分かりませんが、それによってフォリアは重症、特に足に深い傷を負っているのでしばらく自立は不可能でしょう。攻撃のトリガーはおそらく地面との接触、石を投げ入れたり剣で叩いても反応しなかったので生物を認識して攻撃してきているのでしょう。おそらくこれで私たちの存在も露見してしまいましたし、奇襲は不可能と見ていいでしょう。南側のチームが帰って来次第、一旦他の部隊と合流を図りますわ。総員準備を!」
「「「はっ!」」」
指令を受け各々準備を始める。
「地面から刃か……、おそらく魔術ではないだろうな。広範囲で、自動で、生体を識別し、刃を生成する、あるいは地中の刃を動かすのはコストが重すぎる。魔術で継続的にその状態を維持するのは現実的ではないな」
「そうなんですの?タルティちゃんは博学ですわね!私がよしよしして差し上げますわ!」
タルタロスさんのつぶやきにアイネス様が反応する。
アイネス様はタルタロスさんと同じ馬に跨り、さもそこが定位置であるかのようにタルタロスさんを懐に抱えた。
「お姉様……、私の馬……」
一方ルーナさんは馬を取られて困り顔をしていたのだった……。
ウマ娘、ここ最近育成が面倒すぎてただガチャを回すだけの存在になってしまっています。
ゲーム性そのものは好きなのですが、まとまった時間が無いとまずスタート地点に立つ気力が出ないのがやはり欠点ですね……。