悲鳴
「本当なら男性を同行させたくはないのですが、タルティちゃんのお仲間とあらば無下にはできませんわ!ルーナ、護衛対象が1人増えても問題ありませんわよね?」
「もちろんです」
「ではレイさん、ご自身の馬を用意してくださいまし。さすがに馬車の中までの同行は許可できませんわ。乙女の為の空間ですもの。あと、なるべくルーナ以外の子に近づかないように。私の隊は男性嫌いの子が多いんですの、ご配慮いただけると嬉しいですわ」
「わ、分かりました」
僕たちが借りた馬はまとめて村の入り口付近に停留させてある。
その内の1頭に乗り集合地点へ戻った。
ルーナさんと僕を先頭に馬車が5台、周囲に見張り役が数人の陣形。
やや下山した後、山沿いをなぞるように進んだ。
そうしておよそ1時間近くかけて戦場の裏側へと回り込むことに成功した。
その戦場からはアイネス様たちが戦ってた以上に複雑な騒音が聞こえてくる。
「あら、まだ片付いていないのかしら?私たちで半数くらいは倒したと思っていたのですけれど……」
いつの間にかアイネス様も馬に乗って先頭まで来ていた。
その懐には当然のようにタルタロスさんを抱えている。
第二騎士団だけで倒した数は、僕が観測した限りでおよそ30。
それ以前から戦闘を始めていただろうし、少なく見ても40は下らないだろう。
ハインリーネ様はたしか動きの無い個体を含めず50は居ると言っていた。
察知できなかった魔族が大量に居たのか、それとも……。
「アイネス様たちが戦ってた魔族の中に、同じ見た目の魔族が何体か居ましたよね。それが分身能力を持った魔族の分身だって仮定して、その魔族の本体がこっちに居るんだとしたら、分身を生成しまくって人海戦術で戦ってるって可能性もありますね」
「たしかにその可能性もあり得る。あるいはこっちの敵の本隊が想像以上の強さで苦戦しているか、はたまた何かトラブルが発生しているか。それら全ての可能性もある。まあ、レイ君の言った通りだったなら、ボクらが背後から奇襲を仕掛ける事で一気に瓦解させる事ができるだろうね」
そうタルタロスさんが答える。
「随分冷静に分析しますのね。さすがは魔族を討伐しただけありますわ。タルティちゃん、私たち第二騎士団へ入団いたしませんこと?」
「断る。私情もあるが、ボクは明確な目的を持ってレイ君のパーティーに居る身だ。レイ君がアイネス君らの団員となるのであれば話は別だがね」
「あら、それは残念ですわ……」
タルタロスさんは大胆にもパーティーメンバーの前で引き抜きをしようとしたアイネス様の申し出を一蹴した。
「お姉様、とにかく今は戦況を見極めるために偵察部隊を出しましょう」
ルーナさんがそう進言し、第二騎士団は3人一組で2チーム、北と南に分けて偵察部隊を放った。
それからしばらくしないうちに、劈く悲鳴が僕たちの耳に届いた……。
最近またSlay the Spireにハマってしまっています。
やっぱりこういうよくできたローグライクゲームは定期的にやりたくなってきますよね。