財力
「でもそこまでコンパクトに魔術が使えるなら皆そうすれば良くないですか?」
「そう簡単にはいくまい。この戦法の一番大きな問題点はコストだ。素材はもちろん、防具を鋳造する鍛冶師や専用の術式を施す魔術師の手が必要な以上、通常の防具より高く付く。ボクらが使うとしたら奥の手のような扱いになるだろうね」
「タルティちゃんの言う通り、コストパフォーマンスの面において優秀とは言えない戦術ではあります。素材に関してはどうしようもありませんが、鍛冶師と魔術師を騎士団内で賄う事で製造コストを極力下げています」
「ああ……、そういえば使い捨てですもんね……」
懐に優しくない戦術というわけだ。
その点も踏まえて騎士団の財力だからこそできる戦術なのだろう。
事実この戦闘を見る限り、確実に当てられる相手にしか使用していなかったりと結構出し渋っている様子も見て取れるし、ポンポン使えるものではないのは確かなようだ。
「術式の刻印はボクが居るから問題無かろう。並の魔術師よりは良いものを作ってやる。まあ必要かどうかを決めるのは実際お金を払う君だがね」
「うーん……、とりあえず検討ですかね……」
そうしてしばらくしないうちに、劣勢の魔族は劣勢のまま全滅してしまった。
魔物の死骸を残して、魔族は霞となって消え去る。
戦闘を終えた第二騎士団の面々はぞろぞろと馬車の方へと戻って来た。
「タルティちゃん!ご覧になりましたでしょうか!私たちの勇姿を!」
「ああ……まあ……色々勉強にはなっただろうね。そうだろう、レイ君」
「は、はい、そうですね」
「あら、そちらの方はたしか……」
「ボクと同じパーティーのレイ君だ。それで、戦闘は終わったのだろう?ならボクらは引き上げさせてもらおう。ボクの服を返したまえ」
タルタロスさん、騎士団長本人の前でも口調は変わらずなのか。
らしいと言えばらしいが。
カノンといいタルタロスさんといい、いずれ目上の人に怒られる未来しか見えないな……。
「あら、私たちのお仕事はまだ終わりではありませんわ。この後は南の山をぐるりと周って、海側から村を目指しますの」
「……はあ、今度はこちらが挟み撃ちにしてやろうという訳か」
「さっすがタルティちゃんですわ!全て終わるまで長丁場になるかもしれませんが、どうかお付き合いくださいまし!さあ、進軍の準備ですわ!怪我人は馬車へ戻り治療を!手の空いている子は装備の手直しを!準備ができ次第馬車をここへ集めてくださいまし!」
「「「はっ!」」」
指示の通り、アイネス様とルーナさん以外の団員はタルタロスさんに手を振りながら後ろの方へと流れて行った。
どうかとか言いながら有無を言わさないあたり、上に立つ人って感じがするよなぁ。
「レイ君、カノン君はどうしたのかね?」
「カノンの知り合いらしいアングリフさんって人の家に預けてます」
「ふむ、それなら任せておけばいいか。ボクはこのまま連れ去られるらしいが、君はどうするかね?」
「連れ去られるって……。僕も行きたさはありますけど、ハインリーネ様に付いて来ないようにって言われてるんですよね……」
「付いて来ないように、という事なら問題無かろう。付いて行く、ではなく、ボクらは連れて行かれるのだよ?」
「……そんな屁理屈まかり通りますかね……?」
「細かい事はアイネス君がなんとかしてくれるだろうさ。してくれるだろう?アイネス君」
「承りましたわ!お任せ下さいまし!!!」
アイネス様は二つ返事で承諾したのだった。
再三思うが……本当にそれでいいのか騎士団!?
先日ようやく、何故か持っていなかっためだかボックスの最終巻を買って全巻コンプリートしました。
次はどこかに消えてしまったダンタリアンの書架の第1巻を買い直そうと思います。
面白いですよダンタリアンの書架、主人公サイドのダリアンも可愛いですが、塩海はどちらかというと敵サイドのフランベルジュ推しです。