秘書
「レイ君……だったか?君もエリカさんが帰ってくるまでここで待ってるかい?」
「うーん……、ちょっと寄りたいところがあるので……。ご迷惑でなければカノンの事預かっててもらえませんか?」
「預かるのはいいけどよ、村のみんなも怖がってっから、あんまりうろつかないでくれよ?」
「分かりました」
僕はアングリフさんの家を後にした。
用事はアイネス様の部隊の方だから特にうろうろする予定はない。
なんとか交渉してタルタロスさんを連れ戻したいが……はたして返してくれるだろうか……。
あの様子だと相当気に入られてそうだしなぁ……。
レンタル料設定したら結構稼げるんじゃなかろうか。
「……いや人道的にアウトだろ」
本人がバイト代として貰うならまだしも……。
なんてセルフツッコミを入れながら来た道を戻る。
せっかくだから第二部隊の戦闘も見てみたいし、少し見学したらタルタロスさんを連れてアングリフさんのところへ戻るとしよう。
村の入り口に到着すると馬車が数台止まっていた。
そこに人気は無く、単純に荷物置きとして使われているようだ。
さすがに女性方の使用していた馬車の中を無許可で覗き見るのは憚られたので、タルタロスさんの名前を呼びかけ反応を待ったが、返事はとくに聞こえない。
という事は戦線に連れて行かれてるのか?
騎士団的にそれはどうなの……?
まあとりあえずもう少し村から出たあたりまで行ってみるか……。
そうして少し歩いていると、徐々に金属を打ち鳴らす音やよく分からない爆発音なんかが聞こえはじめる。
それに混ざる阿鼻叫喚の声はきっと敵勢力のものだろう。
さらに近づくと1台の馬車が見え、天板に敷かれたカーペットの上に見覚えのあるフワフワヒラヒラしたものが鎮座している。
なにこの絵面……。
「タルタロスさん……ですよね?」
「おやレイ君、こんな所まで来てしまったのかね?」
「はいまあ。タルタロスさんこそそんなところで何やってるんですか……?」
「何をしていると聞かれても何もしていないとしか回答できないのだが。こんなところに乗せられているのもボクの意志ではない」
「ええ、タルティちゃんが馬車の上でお座りしているのは、我々がそうお願いしたからです」
馬車の裏から何者かが現れた。
黒髪ロングで眼鏡の、結構がっしりとした鎧を着込んだ女性だ。
見覚えは特に無い。
「えっと……貴方は……?」
「申し遅れました。私はお姉様……ルブルム王国第二騎士団団長であるアイネス・サリュージア様の秘書を務めさせていただいている、ファウルーナ・シューベルトと申します。ルーナとお呼びください」
「ご、ご丁寧にどうも……。僕はタルタロスさんと同じ冒険者パーティーのレイです。よろしくお願いします……」
「よろしくお願いいたします、レイ様。タルティちゃんと同じパーティーという事は、おそらくタルティちゃんをお迎えに上がられたのでしょうか?」
「まあ、はい。そんなところです」
「大変身勝手なお願いである事は重々承知しているのですが、この度の殲滅戦が終わるまで、どうかこのままタルティちゃんを預からせていただけないでしょうか。もちろん絶対の安全を保障いたします。我々が命に代えてもお守りいたしますので」
ルーナさんは深々と頭を下げる。
「えっと……そのあたりはタルタロスさんに聞かないと……。どうですか、タルタロスさん?」
「そうだね。今のところ、この衣装以外にボクに不満は無いな」
意外にもタルタロスさんはその要求を飲んだのだった。
5億年って閏年も含めるんですかね?
もし含めるんだったらそれだけで約1億日追加されるのでかなり変わりますよね。
4年に1日と言えど5億年分ですもんね。
追記:何も考えず変な数式書いてたので修正