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村長

 騎士団が去ると村はより一層淋しさを増す。


 外出している人はほぼ見当たらず、何かの用事で外に出てきている人は総じて僕を見るなりそそくさと室内に戻っていってしまう。


 扉をノックしても返事すらない。


 状況が状況だし見知らぬ人を警戒するのも分かるが、こんな調子では二進も三進もいかない。


 ちょっとした登り坂の先に一回り大きな民家を見つけ、偉い人の住居だろうと目を付け、坂路を行こうとしたその時、何者かに後ろから声を掛けられた。



「ちょ……ちょっとそこの!君が背負ってるその子、もしやカノンちゃんじゃないか!?」



 振り返るとそこには、白い髭を蓄えた初老の男性が居た。



「えっ、あっ、はい、カノンで間違いないです」

「いやー驚いた。君がこの子を保護してくれたのか?」

「保護っていうか、一緒に冒険者やってます。レイっていいます。色々あって疲れて寝ちゃったのでこうやって僕が運んでました」

「なるほどなぁ、俺はアングリフだ。カノンちゃんにはグリとジジィでグリジィって呼ばれてたな。カノンちゃんの親父のヨハンとは旧知の仲でよ、ヨハンが死んだ後カノンちゃんが家出したって聞いて何日も探し回ったもんさ。こんなとこで立ち話もなんだ、一旦ウチに上がんな」

「あー、えっと、先にカノンを母親のところに連れていきたいんですが……」

「今エリカさんは居ねーんだ。そこらへんも全部話すからとりあえずついて来な」

「わ、分かりました」



 ようやく普通に話してくれる人が現れた。


 エリカさんとは話の流れ的にカノンの母親の事だろう。


 カノンの身の回りの事を知ってる人なのであれば色々と話が早いだろうし助かる。


 僕はアングリフさんに連れられ、彼の家にお邪魔した。


 造りは木の柱に土壁の、僕的には親しみやすい日本の古民家って感じだ。



「それにしても随分悪いタイミングで来ちまったもんだ」

「悪いって、魔族の侵攻の事ですか?」

「なんだ、知ってたのか?」

「ああ……えっと、一応騎士団の人と一緒にここまで来たので……」

「はーどうりで。ならその話はいいか。問題はウチの村の戦える奴らが皆そっちに出張っちまってる事でよ、エリカさんもその内の一人なんだ。緊急時は村長自ら出向くべきだーっつってな」

「えっ、カノンのお母さんって村長なんですか!?」

「なんだ、カノンちゃんから聞いてなかったのか?まあでも言いふらすことでもねぇしな」



 普通にびっくりだ。


 カノンって村長の娘だったのか……。


 いやでもよく考えれば家宝に聖剣があるあたり、それなりの出自であるのは納得のいくところではある。



「カノンのお母さんも戦いに行ったとは言っても、騎士団が到着しましたしもうじき帰ってきますよね?」

「あぁ、そうだといいんだけどな。エリカさん、昔っから頑固でよ、自分の村は自分で守るって人なんだ。騎士団が来て村に帰ってきてる奴らもちらほら居るが、エリカさんの姿はまだ見えてねぇなぁ」

「それは……心配ですね……」

「俺も結構心配してんだ、騎士団サマに帰れって言われても素直に帰る人じゃねぇからよ。ヨハンもカノンちゃんも居なくなっちまって、悪い意味で身軽になっちまったからよ……」



 アングリフさんは茣蓙の上に横たわるカノンを見て呟くように言った。

5億年ボタン、押すか押さないかと聞かれたら押す派です。

100万円を5億年で時給換算したら……みたいなことを言う人とか居たりしますが、身体的な変化が発生しない虚無空間でただひたすらに待てばいいだけなのであれば休日みたいなものですし。

それに情報のインプットはできなくともアウトプットはできなくないので、暇潰し手段は案外豊富ですしね。

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