献身
「……さっき招集かけられた時もそれやってて来なかったんですね」
「アイネスさん……、一応騎士団とは関係ない方だから……、あまり好き勝手しないでくださいね……?」
「もちろん合意の上ですわ!タルティちゃんは着せられるくらいなら自分で着るとおっしゃってくださいましたし!」
「それ合意とは言わないと思いますけど」
アイネス様はそう言っているが、実際は無理矢理着せようとしていたんじゃないだろうか?
そう思うのも、タルタロスさんはそういうのを基本拒否するだろうし、無理矢理着せようとすることはイコールで無理矢理脱がせることを意味するわけで、隷属の刻印も見られてしまうわけだ。
左眼の事や額の瘤の事は誤魔化しが効くかもしれないが、その刻印だけはどうしようもないだろう。
着せ替え人形にされるのを甘んじて受け入れ、自ら着替える事を条件にしたんじゃないだろうか。
と予想する。
信じて送り出したタルタロスさんがまさかこんな姿になって帰ってくるとは思わなかったが、その献身に対して後で何を要求されるか分からないな……。
「……まあとにかく、第二部隊には後方の敵の掃討をお願いします。東側の部隊と挟み撃ちにしたつもりでしょうが、おかげでまばらになっていた敵が一点に集まってきています。一網打尽にできるチャンスです」
「承知いたしましたわ!お任せ下さいまし!」
そのままタルタロスさんを持って帰って行ってしまった。
「僕の隊から数人援護に付けましょうか?あの第二部隊とは言えど相手の数も相当でしょうし」
「いや、大丈夫だろう。いつになく士気が高いみたいだし、火力は主戦力の方に回したい。ここから500m東で陣形を組んでくれ。それが終わり次第リーヴァさんたちを一度引き上げさせる」
「了解」
ハインリーネ様は自分の隊にも同じ指示を出し、隊を前進させた。
成り行きに合わせ僕も付いて行こうとしたのだが、ハインリーネ様に制止される。
「ここから先は私たちの仕事だから、悪いけど騎士団ではない人は連れていけない。様子が気になるのであればちょっと遠いけど村から観察してて欲しい。そもそも動向を許可したのは村に用があるっていう理由があったからだしね」
「そういえばそうですね。じゃあ一旦ここでカノンの母親を探すことにします」
「ああ。そうするといい」
とは言っても、カノンの母親がどんな人なのかも知らないし、カノンが起きるか村民に聞くかしないといけないな……。
山に挟まれてて細長い感じの村だし、しばらく歩いていれば何かしら進展はある事だろう。
もし母親を見つける事ができたらカノンを一旦預けてからタルタロスさんの様子を見に行くとしよう。
あっちもあっちでなんか色々と心配だし……。
レックウザって名前かっこよすぎません?
地のグラードンはグラウンドの首領から来てて、海のカイオーガは海の王から来てるのはまあなんとなく分かるんですけど、レックウザは多分裂空ですよね。
こともあろうに空を裂くで裂空ですよ空を統べるどころか引き裂いちゃってますよ。
まあそもそも元になった言葉がこれで合ってるのか知りませんけど。