霧散
「3匹居るって情報は他でもねーハインの言ったことだ、そこは間違いねぇ。って事はオレが上手い事だまくらかされたって事だ。クソッ、やるじゃねーか」
リーヴァ様はニヤッと笑う。
もしかしてリーヴァ様は強い奴が好きってだけじゃなくて、自分に一泡吹かせてくるような奴が好きなんじゃないか?
「つっても逃げられちまったもんは仕方ねぇ。おいお前!」
戦斧の魔族を指名する。
魔族は倒れたまま、視線だけをこちらに向ける。
「侵攻の規模と目的を教えろ。そうすれば捕虜としてオレが飼ってやる」
弓の魔族はだんだんと体が崩壊していっており、死して消滅しようとしているのだろう。
戦斧の魔族にはまだその予兆が見られない。
手足を切り刻まれ満身創痍ではあるが、致命傷となるダメージは負っていないようだ。
魔族はゆっくりと視線を戻す。
「知らん。殺せ」
「そーかよ」
リーヴァ様は左手の剣を振り下ろす。
悲鳴も無く戦斧の魔族の頭がゴトリと転がる。
2体の魔族の体は朽ち、霞のようになって跡形もなく霧散した。
脊髄をものともせず両断できたという事は、あえて致命傷を与えずに手加減して戦っていたという事だ。
ただいたぶっていたのか、情報を聞き出すために口を聞けるよう加減していたのか、そのところは僕には計り知れないが、リーヴァ様の本気がこんなものではないという事は分かった。
「……取り逃がした魔族は追うんですか?」
「いや、追わねぇ。そもそも戦う前に逃げられた時点でお仕舞いだ。木端魔族がこんな辺鄙なとこに居る時点で目的は足止めと偵察だろ。オレたちのやる事はとにかく報告だ。まあハインの奴は既に察知してるだろうけどな」
意外と結構理性的なようだ。
僕たちは踵を返し、馬のところへ戻る。
騎士団の本隊は既に先に行ってしまってるようで、やや駆け足くらいの速度で本隊を追った。
「んでどーだったよ、オレはカノンと手合わせするに値するか?」
意地の悪い聞き方をする。
「そうですね、ダイアンさんがカノンはリーヴァ様に似てるって言ったのが概ねその通りの意味だって事は分かりました。戦闘スタイルっていうか、体の使い方が同じ感じでしたし……。手合わせしてもらったらいい勉強になるんじゃないかな……とは思います」
「おう、じゃあその嬢ちゃんに宣伝頼んだぜ!」
実際あの戦斧の魔族だけが相手だったらカノンでも勝ててただろう。
しかし遠距離攻撃を交えて攻撃してくる相手を含めるとどうだったかは分からない。
その点も踏まえて、やはりカノンには対人戦の経験が必要だろう。
西尾維新先生の作品はジャンプ漫画のめだかボックスから入った人間なんですが、めだかボックスは今でも時々読み返すくらい好きな作品です。
学園異能バトルもののベースは全てめだかボックスが形成したんじゃないかとさえ思ってます。