役割
壁の目的はもう一人の存在を隠すため。
もうしばらくしないうちに壁は無くなる可能性が高いし、MAGの全回復にも少し時間がかかるから、2枚目の壁は最初のよりしょぼくなる。
ならば視線を別方向に誘導させれば多少なりとも時間は稼げる。
「お仲間もガキじゃねぇか!魔法使ったのはテメェだな!?まずはテメェからぶっ殺してやる!!!」
先に殺すと宣言されてしまった。
まあ遠距離攻撃できるやつから落とすのは定石ではあるが……。
超逃げたい。
タルタロスさんの準備はまだなのだろうか。
「や、やってみろよ!こちとら足腰だけは無駄に鍛えられてるんだぞ!!!」
勢いで言った我ながら結構かっこ悪い挑発だが、これでカノンから敵を引きはがせれば上々といったところだ。
走り出した僕を見て相手は「逃がすか!追え!!!」と魔物を仕向ける。
このまま反時計回りにぐるっと大きく回れば1~2分は稼げるだろう。
足の速い魔物が居たら別だが、ウサギやシカやアライグマなどの低級の魔物ばかりで、仮に追い付かれたとしても魔法である程度あしらえる。
「うおおおお!!!待てえええええ!!!」
「お前まで追ってきてどうすんだよ!!!!!」
魔物の先頭をカノンが走っていた。
敵を分断するためだと言わなきゃダメだったか……。
カノンは僕に追いつき並走し始める。
「敵はこっちじゃないぞ!あいつ倒さないと村を守れない!」
「分かってるって!敵が多いから分散させようと思ったんだよ!」
「魔法で全部バーンってやればいいじゃん!」
「そんな便利な魔法僕のレベルじゃ無理だって!」
たしかに規模の大きい魔法は存在するが、大抵がスキルツリーの後半に取得できるものだ。
レベル18の僕が取得できるわけがない。
そもそもストーンウォールを習得するためのポイント割り振りしかしていないから、攻撃系の魔法はストーンビットとファイアーボールくらいしかない。
一応まだ魔法を取得するスキルポイントは残っているが、たいしたものは取得できないし、今取得できる魔法の威力はファイアーボールとさして変わらないだろう。
「もういいや、止まるぞ!普通に戦おう!いつも通り僕は後ろから援護するから、また囲まれそうになったら少し下がって正面同士で戦えるように体勢を立て直すぞ!」
「よくわかんないけどわかった!!!戦うんだな!」
元の位置から相手の後ろ側へぐるりと回ったところで足を止めた。このまま釘付けにすれば役割は果たせる。
選挙の投票しなきゃいけないのめんどくさいですね。