作戦
タルタロスさんからプランとやらを共有され配置に着く。
内容は奇襲といえば奇襲なのだが、堂々と正面から奇襲を行うらしい。
僕に課せられた役割は司令塔の視界を塞ぐこと。
数十秒その役割を果たせればその間にタルタロスさんが何とかしてくれると言う。
僕はそれを信じて目隠しに徹するしかない。
それぞれ配置に着き、僕のタイミングで飛び出していいと言われているので、魔物の波が浅くなったあたりを見極めてカノンの左後方から飛び出した。
「ストーンウォール!!!」
カノンの前方向に高さおよそ5m、幅10mくらいの地属性魔法の壁を出現させる。
現状のMAGでの最大サイズがこれだ。
タルタロスさんに目隠しに使えと言われたこの魔法、思えばちゃんと攻撃を受け止めるために使われたことが無いな……。
ドカッと壁の向こうで聞こえる音はカノンへ突進してきた魔物の1体だろうか。
一応副次的に本来の役割は果たしているか……?
そして既にカノンの周囲にいた魔物は僕が飛び出してきたのを察知してか一歩後退している。
「おいレイ!こいつら倒しても倒しても出てくるぞ!」
カノンは振り向かずに言った。
突然の登場に驚いている様子はない。
まるで僕が来ることを分かっていたかのようだった。
「ゾウの上に乗ってるやつが延々と魔物を呼び続けてるんだ、あいつ倒さないと終わんないぞ!」
「でもこいつら倒さないとあいつのとこ行けないぞ!?」
そう言ってる間にカノンは周囲の敵を1体倒していた。
壁のおかげで真正面からの敵は抑えられたが、別に僕たちを壁で囲えているわけではないので、次第に左側から壁を迂回した魔物たちがなだれ込んでくる。
そして壁を挟んだ向こう側から喚き声が聞こえた。
「なんだぁ!?仲間が来たのか!?クソが!!!あのガキみたいな奴がもう一人増えたら持たねぇぞチクショウ!!!」
僕はまったくもって強くはないが、できればそのまま誤認して引き上げてもらえるとありがたいのだが……。
正直僕は魔族を結構舐めてかかっていた。
カノンが居れば何とかなると思っていたし、最悪騎士団が来るまで時間稼ぎできればいいと思っていたが、実際はカノン一人でどうにかなる相手ではなかった。
強さを比較できる他の魔族は居ないからこの相手が魔族としてどのくらいの強さなのかは判断付かないが、タルタロスさんの言葉的に魔族として上位の能力というわけではなさそうな事が察せられる。
こいつくらいどうにかできなければ魔王討伐なんて夢のまた夢だろう。
ひとまずはこの壁がどのくらい持つのかもいまいち分からないし次の手を打たなければ。
「カノン!壁の右から一度前に出るぞ!」
「右ってどっちだっけ!?」
「剣持つ手の方!!!」
「わかった!!!!!」
そう言いすぐに右側の敵を薙ぎ払って飛び出した。
右からは敵が回ってきていないおかげで一瞬相手の魔族の方まで突っ走れそうに思えたが、相手もそれにすぐ気付きガードを固めた。
壁の裏に回ろうとしていた魔物は飛び出してきた僕たちの方目掛けて走って来る。
さらには壁の裏に居た魔物たちも僕たちを追いかけてくる。
計画通りだ。
128話、キリ番ですね。