疲労
翌日も早朝に活動を開始する。
今一度カノンの動きを確認するべく、タルタロスさんに追跡魔術を使ってもらい、それぞれの位置を確認する。
休み無しで動き続けているのか、僕たちが休んでいる時間より短い時間だけ休んでいたのかは不明だが、カノンの位置を表す小石は移動を続けていた。
このまま進み続けているとおそらく1日や2日で追いつくことはできないかもしれない。
それにカノンの進路は森を突っ切るルートだ、単純に後を追うなんていうのは不可能だろう。
時折カノンの動向を確認しつつ東の道を真っ直ぐ進み、カノンと並走するくらいの位置関係になってから森側へ進行した方がいい。
そう方針を決め、僕たちは再び東へ馬を駆けた。
何度か馬を休めながら進み、夕方にはレベル上げを兼ねて夕食のために狩りをする。
「……ふむ、カノン君との距離が一向に縮まらないね」
タルタロスさんは焚き火を灯りに地図を広げながらそう呟いた。
カノンの位置を示す小石と僕たちの位置を示す小石は1日経っても接近する事はなかった。
「馬の脚に無尽の体力詰め込んだような奴ですからねあいつ……。僕もカノンと出会ってから結構体力は付いて来た方ですけど、討伐依頼をこなすあいつの背中追っかけ回すだけで午前が終わりますからね……」
「この調子でいくとおよそ6時間差で彼女の方が先に村に着く」
「昨日カノンが飛び出した1時間ちょっと後に僕たちも出たはずなのに、むしろ差が開いて来てるじゃないですか」
「ああ。小一時間歩いてバテたボクとはえらい差だ」
「それ自分で言っちゃいます?」
こうしてまた一日が終わり、同じような日がさらに2回続いた。
そのころにはリセットで消失した僕のレベルも18まで持ち直した。
これで属性を一つに絞ればある程度の威力の魔法を取得することができる。
そして変化が現れたのは4日目、カノンと僕たちの差が少し縮まってきていたのだった。
「さすがのカノンもそろそろ限界が近づいてきましたかね?」
「ああ、そうだといいがね」
タルタロスさんが不安を煽るような発言をする。
「……そうだといいって言うと?」
「進行が遅れる理由は体力の限界以外に何が考えられるかね?」
「えっと、道が悪くて迂回しなきゃいけなかったり、障害物……魔物とか?」
「ご名答だ。ボクが覚えている限りではカノン君が進路を逸れた形跡はない。つまり体力か魔物かどちらかの要因に分けられる」
「魔物に手こずり始めたって事ですか?」
「ああ、疲労との複合的な要因でもあるとは思うが、魔族の瘴気にあてられた魔物はさらに狂暴化し手強くなる。この先現れる魔物が手強くなってくる可能性があるという事を読み取れるわけだ」
疲労もあるとはいえドデカいクマも瞬殺だったカノンが手こずる相手だって……?
「ボクも戦闘に参加する準備はしておく。君も気を引き締めたまえ」
「……わかりました」
ハガレン作者の新作の黄泉のツガイ読みました。
やっぱり普通に面白くて圧倒的な実力を感じますね。
一話目のテンポといい引きといい、展開のメリハリもいいしキャラも立ってるし魅せ方もいいしでオススメでしかないですね。(ダイマ)