猟師
「なんか全然役に立たなくてすいません……」
「大丈夫です!さすがにリタ一人で8体相手は厳しかったので、時間稼ぎしてくれただけでも助かったのです!でもレイさん、もしかして戦うのあまり得意ではないですか?」
「いやぁ、実は冒険者になったばっかりなもので……」
「そうだったんですね、運賃に金貨なんて出してくるものだから稼ぎのいい強い人だと思ってたのです!」
期待を裏切る感じになって申し訳ない。
しかもその金は元々はタルタロスさんのものだ。
商人の人に負けるようでは僕もまだまだだ。
レベルが低くてまだファイアーボールしか魔法を取得してないせいで、戦術的な工夫があまりできなかったとはいえ、相手1体を瀕死にするのがやっとだったのは反省点だ。
剣を使った戦闘はまだあまり経験が無かったせいもあるだろうし、ダイアンさんに対魔物戦闘の訓練を増やしてもらうようにお願いしてみるか……。
「では一件落着という事で、レイさんは焦げてないこの3体を馬車まで運んでほしいのです!」
「わ、分かりました」
僕は剣を仕舞い、僕が相手していた3体を持って馬車の走って行った方へと歩き出した。
しばらくして後方からリタさんも合流する。
「丁度いい時間なので今日は馬車の居るあたりで野営することにするのです」
「そうですね、緊張が解けてドッと疲れが出て来ました」
「腕の傷も後で手当てしてあげるのです!銀貨1枚で!」
「銀貨……まあ、お願いします」
アドレナリンも切れ、思い出したかのように引っ掻かれた腕の傷がじわじわと痛む。
リタさんも倒した4体を持って歩いて来たのかと思ったら、毛皮だけを小脇に抱えて歩いていた。
……ずるくね?
なんで死体を持ち帰るのかと思ったら毛皮が目当てだったのか。
商人だし売り物にするのだろう。
「この3体も毛皮を剥いでから運びません?」
「あぁ、そうですね!でも1体だけは今晩の夕食にするから2体だけ処理するのです!」
リタさんは腰に装備している、ククリという刀身の半ばから曲がった形のナイフを取り出す。
手際よく四肢と頭部を切り落とし、身と皮の間に刃を入れ綺麗に剥がしていく。
10分しないうちにボクの運んでいた2体がただの毛皮になってしまった。
夕食にする1体も首と内臓だけ取って軽量化してもらった。
「商人なのに戦闘も解体作業もできるなんてすごいですね……」
「実はリタも元々は戦闘員だったのです。ですけど捨て駒のように扱われて……腹が立ったのでやめてやったのです!」
二ッと笑ってそう言った。
「解体作業はとある村の猟師さんと仲良くなって、その人に教えてもらったのですよ。とても優しい人でした!」
「なるほど、良い人に出会えてよかったですね!」
「はい!レイさんもいい人ですよ!」
「それお金持ってるからって言葉が隠れてません?」
「あっ、バレたのです?」
そんな談笑をしながら歩いていると、道から逸れた場所に馬車を見つけた。
馬は荷車に繋がれたまま草を食んでいる。
タルタロスさんも無事のようだ。
僕は銀貨を払って手当てをしてもらい、野営の準備に取り掛かった。
夕食を終えそれぞれ就寝する。
明日はようやくルブルム王国に帰還することができるだろう。
昨日は酔いつぶれてサボってしまったのでこれは昨日の分です。