分断
「わっととと」
今更言っても遅いが、走る馬車から飛び降りた僕は上手く着地できる訳も無く体勢を崩した。
踏ん張れる体勢でもないので、僕はあえて重心を低くし、地面に転がる。
右腕から左足にかけてを使い体を車輪のように丸め、でんぐり返しのような要領で頭を地面にぶつけないよう転がった。
2回転したくらいで勢いも弱まり立ち上がる事が出来た。
ダイアンさんとの訓練が役に立った瞬間だ。
吹き飛ばされた時の受け身の取り方……、今回は自分から吹っ飛んだわけだが、勢いを殺すためには転がった方がいいと教えられた。
無理に踏ん張ろうとすると足に良くないからだ。
……と、満足感に浸っている場合ではない、後ろからはオオカミの魔物が来ているのだ。
「ファイアーボール!」
僕は振り返りざまに左手で魔法を放つ。
狙って撃ったわけではなく牽制及び分断のためなんとなくの方向で撃った。
火球はオオカミの前方の地面に直撃し、それを避けるように二手に分かれた。
左右に2体ずつ、僕の方へは合計4体来ているようだ。
左に分かれた2体にファイアーボールを立て続けに打ち込み牽制を続けながら右後方へ走る。
いずれ右へ分かれた2体と接触するがそれでいい。
先に右2体と戦うための作戦だ。
「多対一の時は全ての相手を視界に入れるように立ち回りなさい」と教わっているが、4体まとめてだとさすがに無理がある。
本当は3体と1体に分かれてくれれば各個撃破がしやすかったのだが、相手もしっかり連携が取れているようだ。
僕は走りながら右手で剣を抜く。
「うおりゃっ!」
視界の端に映ったオオカミ目掛けて剣を振りぬく。
既に2メートル程度先まで迫って来ていたオオカミは回避のために後ろへ飛び退く。
「ファイアボール!」
回避中のオオカミ1体を左手で追いかけ、今度は牽制ではない最大火力でファイアーボールを放った。
オオカミの1体は着地するか否かのタイミングで火球と接触し、炎に巻かれ悲鳴を上げた。
距離を取られても追撃ができる、これが近距離攻撃と中距離攻撃を同時に扱う事の出来る魔法剣の強みだ。
だがまだ魔法を当てたオオカミも絶命しているわけではなく、まとわりつく火を消そうとしてか地面をのたうち回っている。
そして僕が魔法を使った隙を突いて、もう1体のオオカミが攻撃を仕掛けてきた。
剣は振りぬいていて構えるのに間に合わない。
魔法はMAGが回復するまで使えない。
「のわっ!」
迎撃ができないのでドッジロールでなんとか回避する。
本当はのたうち回る1体にとどめを刺しておきたいのだが、そんな悠長なことをしている余裕はない。
剣を構え直しているうちにも、さっき牽制攻撃で遠ざけていた2体が近づきつつある。
……やはり今の僕の実力ではこの数相手は対処しきれない……。
そう思った矢先、ヒュンッと風を切る音がしたと思うと、ドスッと目の前のオオカミの首に棒が生えた。
否、矢が突き刺さったのだった。
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