南東
「タルタロスさんは朝食は?」
「遠慮しておこう、絶食は慣れている。それに自由に動けないからこそ今のボクは極限まで省エネモードだ。一日置きにパン一切れと少しの水をくれれば問題ない」
「なんかペットの飼い方をペットから教えてもらってる気分ですね」
「君は時々随分失礼な発言をするところがあるな。まあ隷属している現状ペットと言って特に間違いはないから構わないのだが……」
小学生の時に飼育していた亀を思い出した。
結構世話が楽だった記憶がある。
「そういえばここからさらに北の方にまっすぐ行くと、たしかルブルム王国に続く舗装された道がありましたよね?」
ルブルム王国から見て、タルタロスさんの地下基地は南東方面の少し南寄りの位置にある。
このままルブルム王国に向かって進んで行くより、一度北へ向かってからその道なりにルブルム王国へ帰った方がいいかもしれない。
ある程度は人の通りもある道だからある程度の安全性も確保されているはずだ。
「よね?と聞かれても400年以上前の地理しか把握していないわけだが、まあその頃にもあった気はする。東の端の方には大きめの漁港があって、そこで取れた魚介類を王国に卸すためのルートだったかな?」
「へぇ、そうだったんですね。漁港かぁ、ルブルム王国だと生魚ってほとんど見ないけど、そこまで行けば新鮮な刺身とか食べれたりするんですかね」
「ボクも詳しくは知らないが、たしか魚は寄生虫の危険があるのではなかったかな?生食はあまり推奨されてなかったように思うが」
「ああたしかに……、アニサキスとかでしたっけ?」
でもその場の漁師とかならそういうのにも詳しいだろうし、大丈夫な所だけ刺身にして食べるなら大丈夫なはず……。
なんて思いを馳せながら朝食のジャーキーを噛んだ。
方針は僕に任せるとのことだったので、ここは一度北の方に進むことにした。
ウサギの魔物なんかの狩りやすい相手を見つけたら寄り道して少しずつレベリングをしていく。
1日半程度歩いてようやく目的の舗装路へたどり着いた。
タルタロスさんの麻痺状態はまだ良くならないようだ。
「はぁ……きっつ……」
「頑張りたまえレイ君、あとおよそ半分だ」
「簡単に言ってくれますけど僕の荷物がおよそ3倍の重量になってるんですからね!?」
重りを付けて運動する修行でもしているような感じだ。
背中の上で応援されたところでそれが軽くなる事はない。
区切りのいい所という事で道端で休んでいると、どこからか物音が聞こえてきた。
「ずんだもん」のイントネーションって「オメガモン」と「もやしもん」のどっちなんだろう……。
なんて考えてたら正直もやしもんもイントネーションが合ってるかよく分からなくなってきた……。