要因
数日間似たような狩りを続け、ウサギだけでなくシカやイノシシの魔物も討伐するようになっていった。
神楽坂の現在のレベルは29だ。
対して僕のレベルは11。
レベルが下がってる理由は単純、ユニークスキルを使ったからだ。
ユニークスキルの使い方は結構簡単で、ユニークスキルを使うと強く意識するだけでいいようだ。
何かの言葉をトリガーにすると自分の中で決めていれば、その言葉を発するだけでも発動する。
ステータスポイントが全部返ってくるだけかもと淡い期待を抱いて使ってみたが、全部スッキリ初期状態になるらしい。
まあ神楽坂との勝負は終わったしレベルはもうどうでもいい。
レベル20くらいまでならすぐに上がるし、ついでに倒した敵の個体差でレベルの上がり具合が変わるかの確認もできた。
結果、多少だが個体差はあるようだが、その要因まではまだ分かってない。
体の大きさは関係ないみたいだから、今は魔物が吸収した瘴気の量とかが要因なんじゃないかと考えているが、その瘴気とやらを計測する方法が無い故に解明できてない。
とまぁその辺はさておき、今度は試しにLUK極振りでも試してみようかと思い立ってレベル上げをしている。
LUKが使えないステータスだったらそれはそれでまたステータスリセットすればいいだけだ。
今のところ特に恩恵は感じられていない。
「レベル上げは順調か?」
「ぼちぼちだな、戦闘に有利なステ振りをしてないからちょっと大変だけど」
僕はステータスウィンドウを開いて覗く。
LUK以外は綺麗さっぱり、最初に開いた時と同じ数値に戻っている。
「ちょっとくらい他に振ってもいいんじゃないのか?」
「まあ今のところどの魔物にもちゃんとダメージ入るし普通に倒せるから大丈夫だろ、とはいえレベルまで元に戻るなんてなぁ……、ステータスポイントだけ戻ってくるんだったらチートスキルだったかもしれないのに……、説明のページにもっと詳しく書いてほしかったな」
ウィンドウのページをめくり、最後のページのユニークスキルを再度確認してみる。
「自分のステータスを初期値に戻す事ができる」、確かにちゃんと読んだら普通にレベルまで初期値に戻りそうな書き方ではあるが。
「…………たしかに、チートスキルかもしれないな」
「神楽坂のユニークスキルはどうだ?危機感知だっけ?どうよ、使い心地は」
「まぁ……悪くはないんじゃないかな?例えばあっちの……」
神楽坂は遠くの山の方を指さす。
十数キロくらいは離れてるんじゃないだろうか。
「あの山がどうかしたのか?」
「あの山には近づかない方がいい、今の僕たちやクレフ隊長たちじゃどうやっても太刀打ちできない何かが居る……、ってのがなんとなく分かったりするね」
「へぇ~、強い敵が居る場所が分かったりするのは普通に使えそうだなぁ」
「あとは会話中の返答の選択肢の中で、何を選べばいいかがなんとなく分かったり」
「なんだよそれ、アドベンチャーゲームにおいて最強の能力じゃねぇか」
対人で苦労することが全くなくなりそうなユニークスキルだ。
もしかしてこの前の競争の件もこのユニークスキルで上手く誘導されたのだろうか。
「まあ正解が分かると言っても、そこに正解が無ければどうしようも無かったりするんだけどね……」
「そんなこともあるのか、万能ってわけではないんだな」
「あぁ、でも何か一つの要因で新しい選択肢が産まれることもある、そういうのが分かるのも良い所だな……」
神楽坂は少し考える素振りを見せた。
ほどなくして神楽坂に言われる。
「篠原には悪いんだが一つ試して欲しいことがあるんだ、その時一度ステータスリセットを使ってもらいたいんだけど、頼めるか?」
「また1からレベル上げしろってかぁ?まあ慣れてるからいいけど」
「助かるよ!じゃあ今日の狩りは特別にこのへんで終わりにしておこうか、夕食が終わったら篠原の部屋行くから、またその時にな!」
僕との約束を取り付けると、神楽坂はクレフ隊長の方へと駆けていった。
今日の狩りを早めに撤収させる旨を伝えるためだろう。
夕暮れを待たずに笛の音が鳴り響き、狩りの終わりを告げた。
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