洞窟
先に行ったカノンが僕たちが追い付いていない事に気付き引き返してきて、タルタロスさんを背負って一緒にルブルム王国に帰ってくれるなんて展開に期待したいものだが、そんな事が起こる確率はリセマラ周回の1周目のガチャで目当てのキャラクター全部引く確率くらい低いだろう。
初めてカノンに会った日、僕のペースにある程度合わせてくれたのは「僕を王国まで案内する」という目的で動いていたからであって、今回はただルブルム王国に帰るのが目的である以上彼女は馬車馬のように目的地へ走るだけだ。
カノンに荷車でも繋げば擬似荷馬車が完成するのではないだろうか?
いやさすがに可哀想だからやらないけど。
「それにしてもこの洞窟、声の反響を聞く限り割と奥まで続いてそうだが、もしや野生生物の住処だったりしないかね?」
「あぁ、たしかに。じゃあ僕ちょっと奥の方クリアリングしてきますね」
「ボクは今咄嗟に動けないから、何か居たとしても刺激しないで穏便に交渉したまえよ」
「何を交渉するんですか。縄張りに一泊させてくださいって金貨でも払うんですか?」
軽口をたたくタルタロスさんに留守を任せて、僕は洞窟の奥を見に行くことにした。
灯りは僕の荷物にあるランタンを使う。
カノンとの遠征に備えて買い揃えたアイテムの一つだ。
あいつは数日かかる依頼の時でも当たり前のように聖剣一本だけ携えて出て行くから、いつものように僕が必要そうなものを全て携帯している。
少しくらい手伝ってくれてもいいんじゃないかとか思うけど、カノンは今までそういうスタイルでやって来たんだからしょうがないか。
「それにしても何もない洞窟だなぁ……」
一本道の洞窟を進みながらつぶやく。
もっとネズミやらコウモリやらが住んでいるんだろうと予測していたが、意外にも洞窟内は閑散としていた。
いや正確にはネズミの死骸のようなものはいくつかある。
珍しい事にそのどれもが体からキノコを生やしている。
よくは知らないが、冬虫夏草というものだろうか?
漢方か何かの素材だった気がするし、持ち帰ったら高く売れたりしないだろうか?
なんて考えながら進んで行くと、だんだんとキノコの数とサイズが明らかに増えてきていることに気が付いた。
「うわぁ、何だここ……。こんだけ大量にあるとさすがに気色悪いな…………ん?」
視界の端に何かモゾリと動くものが見えた気がする……。
いやでも見えるものはキノコと岩壁しか無いし……。
なんて思いながらもその場所を注意深く見ていると、やはりキノコがモゾリと動いた。
「えっ???」
しばらく観察していると、モゾモゾ動く原因が動物などではなく、キノコそのものが動いているものだと気付く。
そのキノコは先ほどまで地中に埋められていた二足で直立し、明らかにこちらの様子を伺っている。
僕が一歩後退りすると、機を察したかのように他のキノコもぞろぞろと動き出し、僕の方へと進軍を始めた。
「うわあああああああああ!?!?!?キモッ!!!!!」
僕は反射的に逃げ出す。
集合体恐怖症の人が戦慄するであろう映像が僕の後ろにある。
幸い走る僕に追いつく事は無いようだが、この状況をどう対処すればいいのか全然分からない。
もう数秒でタルタロスさんのところに着いてしまう。
「に、逃げますよタルタロスさん!!」
そう叫びながら駆ける。
「おや、交渉決裂かい?」
「そんなこと言ってる場合じゃないですって!」
タルタロスさんは仰向けの状態から俯せになり、赤ちゃんのはいはいのような感じで方向転換して僕の方に向く。
「おや……おやおやおや……」
キノコの軍勢に追いつかれはしないものの、タルタロスさんを担ぎ上げる時間は無いかもしれない。
ならどうするか……。
「ぼ、僕が時間稼ぎするので!そのうちにそのまま外に逃げててください!」
ついにタルタロスさんの横まで辿り着き出口は間近だが、まずは自力でタルタロスさんに避難をしてもらおう。
僕は腰の片手剣を引き抜き、左手を前に構える。
相手はキノコ。
なら弱点は火属性だろうか。
「ファイアーボール!!」
「レイ君!それはマズい!」
最大限の火力をイメージし、火球を放った。
しかしそれは多くのキノコを焼き払ったものの、熱風で舞い上がった黄色い粉塵のようなものが辺り一面を覆う。
「うわっ!なんだこれ!」
一歩下がろうとしたが、足が何故か言うことを聞かず、そのまま僕はドサッと後ろに倒れてしまった。
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