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荷物

 タルタロスさんの持ち出した荷物は結構少なかった。


 主に水や食料と書類の束だ。


 多分書類の束の方が比率が大きい。


 そして何故か金品は持ち出そうとしなかったので、タルタロスさんの生活費も必要だし、僕が持てるだけ持ち出すことにした。


 それにしても硬貨が全部旧式のものだから換金するの大変そうだなぁ……。


 こんなにたくさん旧貨幣を持ってるのもなんか怪しまれそうだし……。


 もういっそ貨幣製造所に持って行って全部等価で交換してしまおうか?


 ……いや、さすがに勿体ないからやめておこう。



「レイ君、もしかして一日中歩き続けるつもりかい?」



 僕の後方から気だるげな声で呼びかけられる。


 昼頃から出発し始め、もう2時間くらいで日も落ちるかという時間まで休み休み歩いていたのだが、歩くペースはどんどんと落ちていき、半日でおよそ5分の1くらいの距離しか進めていない。



「このペースだと5日間くらいかかっちゃいますよ?カノンが本気で走ったら多分2日かからずルブルム王国に到着すると思うので、3日間もあいつを放置するのはなるべく避けたいんで、できるだけ急ぎたいんですよね」

「2日弱か、尋常ではない体力と足の速さをしているな彼女は……。先祖は馬だったのではないか……?」

「まあ、バカみたいな体力してるとは僕も思いますよ……」



 話をしながらタルタロスさんは岩に腰掛けて休憩を取っていた。


 よく考えれば500年もの間あの島で生活していたタルタロスさんの主な運動といえば、部屋を行き来する階段の上り下りとちょっとした畑仕事の分しかなかったわけで、体力が無いのも当然といえば当然か。


 僕は今、カノンを優先するかタルタロスさんを優先するかの選択を無駄に迫られている。


 なんていうか、今のところ僕のペースに合わせてくれる人物がダイアンさんしか居なくないか……?


 そう思うとなんか急にダイアンさんが恋しくなってくるな……。



「そうだ、馬を使えばいいではないか。レイ君、野生の馬を捕まえてボクたちを乗せて走れるよう調教しておいてくれ」

「疲れるとIQ低くなるタイプですか???」



 ここには野生の馬も居なけりゃ調教できる人間も居る訳がない。


 無茶な事を言わないでくれ。



「えー。なら君がボクを乗せて行っておくれよ。ボクはもう足が棒になってしまった。そう、ボクは棒、そしてボクは君の所有物。つまり君はボクを持ち運ぶ義務があるというわけだ」

「バカな事言ってると置いて行きますよ」

「ああっ!待ちたまえっ!」



 意味不明な三段論法を持ち出すタルタロスさんを置いて行こうとすると、嫌々といった感じで後を付いてくる。


 まだ日は落ちていないし、もう少しくらいは進んでおきたい。


 そんな風に思い、またしばらく歩き、ふと後ろを見てみると、付いて来ていると思っていたタルタロスさんは遥か後方で俯せに倒れてしまっていたのだった。



「た……タルタロスさん!?」



 僕は慌てて安否を確認するために駆け寄った。


 僕が近づくと、タルタロスさんは俯せながらも言葉を発した。



「……だから……、もう足が棒だと言ったではないか……。もー無理、膝が言う事を聞かない。ボクはもはやここまでのようだ」

「す、すみませんすみません!なんかバカな事言ってるからまだ余裕あると思ってつい!今日はここまでにしましょう!!!」



 危なかった……。


 本当に置いて行ってしまうところだった。


 ここまでにするとは言ってもこんな大っぴらな平原の上での野宿は厳しいものがある。


 仕方なく僕はタルタロスさんを背負い、遠くに見えた岩壁の窪みをキャンプ地とするべく、そこへ向かった。

風呂上がりの缶コーラが超美味い!!!

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