9 そんなことはないハッピーエンド
それからというもの、あのじいさんのお礼のおかげなのかどうかは知らないが、俺の人生は、トントン拍子にうまく転んで行った。
俺が商談をまとめた『お家で凝ったパンナコッタ』は空前の大ヒット商品となり、かつてのティラミスの時のような、パンナコッタブームを巻き起こした。
おかげで俺は営業部長に昇進し、その後の大きな商談も次々に成功させ、俺は出世街道をまっしぐらに進んだ。
一方、俺が助けたあの若い男は、数日前にひょんな事で再会し、少し話をした。
あれからすっかり立ち直り、今は新しい職場で頑張っているそうだ。
人生で初めての彼女もできたらしい。
まあ、めでたしめでたしというところだろうか。
さて、最後に、すっかり誤解されてフラれちまった弥生だが、その後すぐに土下座して謝って、何とかヨリを戻す事ができた。
そしてプロポーズをし、彼女はそれを受け入れてくれて、来月式を挙げる予定だ。
まったく、いち時はどうなる事かと思ったが、それが何より俺によってはめでたしめでたしな事だ。
そして次の月、俺と弥生は小さな教会でささやかな結婚式を挙げた。神父は俺に尋ねた。
「あなたは彼女を、永遠に愛する事を誓いますか?」
それに対し、俺はきっぱりと答えた。
「そんなこたぁないっす」
あれ?