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第3章 プロローグ 『2人の気持ち』

第3章 プロローグ 『2人の気持ち』




西暦2021年2月16日16時




川崎南総合病院ロビー



「お2人とも今日はありがとうございました。」


「真菜ちゃん‼︎お母さんのことで何か助けてほしいことがあったらすぐ言ってね‼︎私も私の家族もすぐに駆けつけるから。」


「俺も絶対瑞樹を見つけるから‼︎約束するよ‼︎」


「………‼︎はい‼︎」


 昴駿太郎と豊坂雅美は瑞樹の妹、真菜と別れると病院を後にした。2人はそれぞれ真菜を励まし、自らの意思も固めた。


「昴くん。どっか寄って少し話してから帰らない⁇」


「え……⁇おう、全然いいよ。」


 駿太郎は少し驚いたが、すぐに承諾した。たまたま目の前に喫茶店があったため、2人はそこでお茶をすることにした。


「私、何年も前から瑞樹のことが好きなの。」


 私は豊坂雅美、20歳。本郷瑞樹の幼馴染で大学2年生。8年間バスケをやってて高校の最後の大会も県大会のいいところまで進出できた。男子と付き合った経験は一度だけ。真剣に告白された相手に対し、すぐに断ることができなかった。しかし結局相手とはうまく噛み合わず、私の方から振ってしまった。


「……………はへ⁇」


 駿太郎はとても気の抜けた返事をしてしまった。豊坂さん、瑞樹のことが好きだと⁉︎突然のカミングアウトに衝撃を隠せない。

 その駿太郎の姿を見て雅美もクスリと笑いがもれた。こんな素直な気持ちを男子に話したのは初めてのことである。


「なんだか瑞樹をからかった時のリアクションに似てたよ。」


「マジ⁇まぁ俺たち親友だから似てきてんのかも。ってかそんなことは置いといて‼︎瑞樹のことが好きってマジなんすか………⁉︎」


「……………マジ。」


「へ〜〜〜。」


 駿太郎はニヤニヤしながら雅美を見つめてきた。マスク越しでも憎たらしい笑みが十分伝わってきた。雅美は少し頬を赤らめながらも駿太郎に多少の苛つきを覚えた。しかし言うと決意したのは自分である。ここはもう全てを曝け出すしかない。


「幼稚園の頃から瑞樹といる時間がすごく楽しかった。色んなところを歩き回って、本当に色んな思い出を作ったの。将来ずっとこうやって遊ぼうねって約束もしてたんだよ。」


「ワオ〜オ。」


 駿太郎は想像以上の惚気話で若干引いてしまっていた。今現在の瑞樹をよく知っているからだろうか。そんなことをする瑞樹のイメージが一切湧かず、なんだかむず痒い気分である。ってかこの話してて誰も得してなくね⁇


「でも瑞樹はそんな約束ちっとも覚えてなかったのかな………。小学校から中学校、中学校から高校。進級進学するたびに瑞樹との距離は離れてく一方。ねぇ瑞樹、私の何がダメなの……。」


 気づけば雅美の周りの空気がどんよりとしており、なんだかこっちまで落ち込みそうになるほどである。


「いや、でも豊坂さんの愚痴なんて一つも瑞樹の口から出てこなかったぞ‼︎絶対嫌いってわけじゃないって‼︎」


「本当に⁉︎じゃあ私のこといつもなんて言ってた⁇」


「そうだな〜………。なんか豊坂さんのこと話してるの聞いたことないかも。」


「好き嫌いどうこうじゃなくて興味もないってことね……………。」


 雅美の落ち込み度は最高潮に達した。なんだか地面にめり込んだんじゃないかと錯覚してしまうほど雰囲気が沈み込んでいる。


「だぁぁぁ‼︎違う違う‼︎身近すぎて特に話すことないとかそんな感じよ多分‼︎‼︎」


「………ちょっとよくわかんない。」


 駿太郎はなんとかフォローしたつもりだったが、逆に雅美に睨み返されてしまった。正直さっきのは自分でも何を言っているのかよくわからなかった。


「なら本人に聞くしかねぇよ‼︎豊坂さん‼︎絶対瑞樹を見つけ出そう‼︎」


「‼︎うん。そうだよね‼︎私も命に変えてでも見つけるくらいの気持ちで探すよ‼︎」


 雅美の気持ちが想像の50倍くらいなので駿太郎もいよいよドン引きし始めた。


「今度行方不明者の情報を聞き出しに川崎南高校に行こうと思っててたんだけど、豊坂さんもよかったらくる⁇」


「南高に⁇いいよ‼︎めちゃくちゃ行く‼︎」


「めちゃくちゃ行くってなんだよ。」


 とりあえず話はまとまった。




 喫茶店を出て2人は帰路についていた。


「誘拐じゃないとすると瑞樹が行きそうなとこは………、1人カラオケ⁇ネットカフェ⁇それともまさか自分探しの旅に⁇」


 歩きながら雅美は独り言をぶつぶつと呟いていた。側から見たらやばい子状態になっている。駿太郎はなんとか会話に持ち込ませることにした。


「瑞樹がアニメとか漫画好きってのは知ってる⁇」


「もちろん‼︎SNSとかで瑞樹が面白いって言ってるやつは大体チェックしたよ♪」


「ドヤ顔で言ってるけどちょっと怖いよ豊坂さん………。」


「はっ‼︎まさか本当に異世界に召喚されたなんて言わないよね⁇」


「う〜ん。正直今の段階だと無きにしも非ずと言うか………。」


「召喚士さん‼︎お願い‼︎私も召喚して‼︎瑞樹に会わせて‼︎」


「豊坂さん⁉︎俺もう今日の豊坂さんの情緒がわかんね〜よ‼︎」


 すると刹那、雅美を上空から強烈な光が包み込んだ。


「⁉︎嘘だろ⁉︎」


「やった‼︎瑞樹‼︎本当に異世界にいるん……。」


 そこで雅美の声は存在ごと消えてしまった。周りには人だかりができ始めている。スマホを掲げ、撮影をしている人もいるようだ。これはいよいよ政府や警察が隠し切れる事件ではなくなってしまったかもしれない。


「ってか俺と2人で出かけたやつは別れ際に行方不明になるっていうジンクスできてね⁉︎」


 そしてあの光に包まれる現象。召喚してほしいと雅美が実際に口にしたことで起きた現象である。これは自分でも可能なのだろうか。駿太郎は覚悟を決めた。


「俺だって瑞樹に会いたい気持ちは豊坂さんにも負けてね〜ぞ‼︎おい‼︎俺もそっちの世界に連れて行ってくれ‼︎」


…………………………。


 反応なし。駿太郎はただ人だかりのど真ん中で訳のわからないことを叫んでいるだけの人になってしまった。


「おおぉぉぉいいい‼︎‼︎‼︎頼む‼︎このままじゃ色んな意味でこの世界にいられね〜よ‼︎俺も連れて行ってくれぇぇ‼︎」


 必死の願いが届いたのか。今度は雅美が消えた時のように光が駿太郎に突撃した。


「マジか⁉︎行くのか⁉︎俺も行っちゃうのk…。」




 叫んでいる途中だったが、そこで俊太郎の存在も消えてしまった。こうして行方不明者がまた2人増え、この2人の消える映像は全国へと拡大してしまった。

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