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第2章 プロローグ 『一方その頃現実世界では』

第2章 プロローグ 『一方その頃現実世界では』




時は少々遡り、西暦2021年2月16日10時



神奈川県川崎市某タワーマンション一室



「瑞樹と連絡取れなくなってから2週間以上経ったな。」


 パソコンを操作しながらそう呟いたのは昴駿太郎。先日異世界へと転移してしまった本郷瑞樹の親友である。今日も今日とて引きこもり連続行方不明事件を独断で調査していた。2月9日、瑞樹と共に自分たちの母校の調査をしようと約束をして別れたあと、一切連絡が取れなくなっていた。現在は瑞樹の家に直接出向こうかと考えているところであった。


ピンポーン


 インターホンの音が廊下から聞こえてきた。出前を頼んだ覚えもなし。人を誘った覚えもない。駿太郎は恐る恐る受話器を取った。


「はい。どちら様ですか⁇」


「どうもこんにちは。神奈川県警のものです。」


 駿太郎は顔を真っ青にした。実は彼、警視庁で働いている父のパソコンから勝手にデータを抜き取り、調査を行なっていた。それらの行為がついにバレてしまったのだろうか。


「な…なんのようですか⁇」


 駿太郎は冷静さを保とうとは頭では意識していても、声の震えは止めることができなかった。


「昴駿太郎さんですよね⁇本郷瑞樹さんの知人で間違いないかな⁇」


「……………は⁇」




神奈川県警察本部某一室



「………豊坂さん⁉︎」


 警察署に来て知り合いに会うとは思わなかった。駿太郎と同じく待合室のような部屋に先客で座っていたのは豊坂雅美であった。彼女は瑞樹とは幼稚園の頃からの仲だと聞く。いわゆる幼馴染である。彼女と最後に会った日も瑞樹と同じく2月9日である。たまたま立ち寄ったファストフード店で偶然バイトをしていたのが彼女である。


「………⁉︎昴くん⁇」


 豊坂の方も駿太郎に気づいたようだ。目を合わせたその時、駿太郎は一瞬で豊坂の心中を察した。彼女は今にも泣きそうな顔をしていた。


「………瑞樹と連絡が取れないの………。」


「あぁ。俺もだよ。」


「⁉︎やっぱりそうなんだ………。最初は私が嫌われちゃっただけなのかなって思ってたんだけど。瑞樹のお母さんから電話がかかってきて1週間以上行方がわかってないって。」


「………マジかよ…。」


「豊坂さん。こちらへどうぞ。」


 話の途中であったが豊坂は警察に連れて行かれ、取調室のような部屋へと入っていった。一体何を聞かれるのだろう。そしてこの後は自分も何か聴取されるのだろうか。


「昴さん。こちらへ。」


 駿太郎の番が回ってきた。


「実は本郷瑞樹さんとの連絡が2週間誰もできておりません。防犯カメラの映像などから最後に彼と会話をしていたのはあなたと豊坂さんの2名ということがわかりました。何か彼の行方の心当たりはありませんか。」


「………その日から彼は家に帰っていないんですか⁇」


「………実はそうではないんです。彼がその日書店で購入していた漫画や小説の入った袋が彼の部屋の前に置いてありまして………、玄関に靴もありました。」


「⁉︎」


 駿太郎は気づいてしまった。これは引きこもり連続行方不明事件とかなり似通っている現象だということに。行方不明になった引きこもりたちも殆どが外に出たような形跡がなく、中にはゲームがつきっぱなし、食事が残りっぱなしというように、明らかになんの前触れもなく突然消えてしまったかのような事例が多い。

 初めは駿太郎もこのことを警察官に伝えるべきか悩んだ。しかし、自分の友人まで巻き込まれてしまったのだ。もう隠してる場合でもない。


「最近の引きこもりやニートの行方不明事件と同じような現象ですね………。」


「⁉︎なぜそれを⁉︎」


「ネットやSNSなんかで少しずつ囁かれてますよ⁇半信半疑の人がまだ多いでしょうけど。」


「そうでしたか……。なら有識者のきみに意見を聞きます。彼らは一体どこに行ったと考えてますか⁇」


「………そうですね〜。瑞樹本人が言ってたことですけど、異世界に飛ばされちゃった♪………なんて……。」


「……………………。」


その日一の冷たい空気が取調室中に広がった。




神奈川県川崎市川崎南総合病院療養病棟




「………‼︎もしかして雅美ちゃん⁉︎」


「⁉︎真菜ちゃん⁉︎大きくなったね‼︎」


 駿太郎と豊坂は病院に来ていた。豊坂は突然見知らぬ少女と言葉を交わし盛り上がっている。


「あ、こちら瑞樹の妹の真菜ちゃん。」


「兄のご友人ですよね⁇はじめまして。妹の真菜です。」


「昴駿太郎です。よろしく。よくできた妹だな。」


「でしょ〜⁇」


「……なんで豊坂さんが自慢げなんだよ。」


 瑞樹と豊坂は幼馴染だ。当然妹とも面識があったということだろう。




「こちらになります。」


 しばらく歩き、とある病室の前に到着した。妹さんが扉を開けてくれると中には1人の女性がベッドで就寝していた。その女性は駿太郎も知る人だった。本郷瑞樹の母親である。


「おにい…兄がいなくなってしばらくしてから体調と意識がおかしくなり始めて、今では食事が喉を通らなくなったので点滴で栄養を取ってます。」


 言葉が出てこなかった。あまりにも無念。あまりにも悲痛な光景である。チラリと横を見ると豊坂も目に涙を浮かべていた。息子が突然跡形もなく消えてしまったのだ。親御さんの心労は計り知れないことだったのだろう。




 この時駿太郎は決意した。必ず瑞樹を見つけ出すと。

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