65話 エピローグ
2021-12-24 漫画1巻発売!
「…………寝すぎた……頭痛ぇ……」
『まったく、人間は軟弱ね』
「とりあえず……襲撃とか物騒なことがなくてよかったのです」
セラフィム襲撃から一夜明けて。
俺は物資の補給も済んだところで、結界都市シーリアを発つことにした……のだが。
『というか……なんなの、あの人間たち?』
「さ、さあ……」
「……フィフィさまに食べられる待ちでは?」
振り返ると、市門の前になぜか大勢の市民たちがいた。
とくに交流はなかったはずだが、俺の旅立ちを市民総出で見送りに来たらしい。
「えっと、本当にいいのか……こんなに物資をもらって?」
旅袋いっぱいにつまった食料などの物資を見ながら、年長らしき男に聞いてみる。
結界騎士なき今、この年長の男がとりあえずこの町のリーダーらしいが。
「ええ、勇者殿は命の恩人ですから」
と、何度目になるかわからない言葉が返ってきた。
「いや、べつに勇者とかじゃないが……まあ、もらえるならありがたいな」
装備も新調できたし、食料も手に入った。
なんだかんだで、当初の目的であった補給も充分にできたわけだ。
と、そこで。
「それと……忘れ物ですよ、勇者殿」
「え?」
忘れ物がないかは確認したのだが……。
と思って、彼が俺に差し出してきたものを見ると。
それは純白の剣――聖剣・白夜ノ剣だった。
この都市に結界を張るための古代遺物だ。
結界都市シーリアの象徴みたいな剣でもある。
「それは、この町に必要だろ」
「いえ、この剣はあなたが持っているべきものでしょう」
「……その剣がないと、野良の魔物が入ってくるかもしれないぞ」
「それでも、どうか受け取ってください。我々が勇者殿にできることは、これぐらいしかありませんから」
他の市民たちの顔も見るが、どうやら退く気はないらしい。
「…………わかった。それじゃあ、託されよう」
俺は聖剣をうけとり、腰にさす。
心なしか、聖剣は昨日よりも重みがある気がした。
と、そこで。
『テオ、なにしてるの? 先に行ってるわよ?』
背後でフィーコが焦れったそうな声を出す。
「おや、仲間の方がお呼びですね。お引き留めして申し訳ない……」
「いや、仲間じゃないから気にするな」
「は、はぁ……?」
「まあでも、そろそろ出発しようか。いつまでも、この町にいるわけにもいかないからな」
そう言いつつ、俺が市民たちに背を向けたところで。
「勇者殿、我々はけっして忘れません。あなた方が示してくれた勇気を。人間が魔物に勝った日のことを……」
「そうか」
「どうか、ご武勇を」
「……ああ」
俺は背中越しに手を振って応え、結界都市シーリアを後にした。
町の外に出ると、目の前に広がっているのは青空と草原――。
ルークが見たいと言っていた外の世界だ。
俺はなんとなく聖剣の柄を手で触れる。
「…………」
結界都市には1日いただけなのに、この風景が懐かしく思えてくるから不思議だった。
そんな風景の中で、フィーコとミミスケが俺を待っていた。
『はい、あなたが来るまでに1分かかりました』
「……ぷんぷんです」
「すごく心が狭い」
『って……うへぇ、その聖剣持ってきちゃったの?』
「あ、あの……ボク、その剣、生理的に嫌いなのですが……返品とかできませんか?」
「さっそく不評でなによりだ」
『とりあえず、次の目的地は――“聖剣の高価買取をしてるお店”で決まりね』
「決めるな」
『ま、本音はさておき……』
「本音が隠しきれてないぞ」
『次はいよいよお待ちかねの魔界ね。覚悟はできてるかしら?』
「……できてません!」
『うん、元気は100点満点ね』
「ぼ、ボクたちの冒険はまだまだこれからです……!」
「打ち切り感出しても行くからな」
しばらく進んでいくと、丘の先に海が見えてきた。
そのさらに先には――黒々としたもやをまとう陸地が見える。
――――魔界。
強力な魔物たちの跋扈する大陸。魔物の“王”がいる魔物たちの国。
それが――俺たちの次の目的地だ。
……というわけで、11章終了です!
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
また、作品としてもここで完結とさせていただきます。
けっこう重い話もありましたが、ここまでお付き合いいただき本当にありがたい……。
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