表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この世界で俺だけが【レベルアップ】を知っている(Web版)  作者: 坂木持丸
第1章 都市脱出

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/66

3話 さぁ――反逆開始だ

 オーガを殺した時点で、もう後戻りはできない。

 急いでこの町から脱出する必要がある。

 だが、その前に――。



 ――この町にいるオーガを、全てこの手で討伐しよう。

 


 その理由は、もちろん――レベルを上げるためだ。

 レベル5で外に出ても、すぐに野良の魔物に食われてしまう。

 どうせ、この町から脱出するには、最低でもあと何匹かオーガと戦わなければいけないのだ。

 それなら相手が油断している隙に、こちらから仕掛けさせてもらう。


(……まずは、食堂にいるオーガたちだな)


 今、この町のオーガのほとんどは食堂に集まっている。

 もちろん、生贄おれを食うために。

 だからこそ、俺は町から脱出するのにこの“投票”の日を選んだ。

 1か所に固まってくれているなら、油断している隙に一網打尽にすることができる。


 とはいえ……レベル5では、食堂に集まっているオーガたちをまとめて相手するのは難しい。

 いくら前世の知識や技術があるとはいえ、さすがにまだレベルが低すぎる。

 超級魔法を使えたところで、魔力不足で発動できないのなら意味がない。


 それに、【筋肉操作】というオーガの天恵ギフトは、攻撃だけでなく防御にも応用が効く。

 もしもオーガに首の筋肉を増大させられたら、ナイフの刃では致命傷を負わせるのが難しくなってしまう。


 できれば、1体1体、不意打ちで倒したいところだが……。


(……そのための策は立ててきた)


 俺は調理場にあるナイフを何本かもらいつつ、調理油を床や壁にぶちまけた。

 そして……。




「さぁ――――反逆開始だ」




 床に手をついて、“手火(フェオ)”の魔法を唱える。

 その瞬間――。


 ごォォオォ――ッ!! と、調理場が爆炎に包まれた。


 一瞬にして視界が炎と煙で覆われる。

 鍋や皿がけたたましい音を立てて跳ね飛び、城全体ががらがらと激しく揺れ、どこかから怒号や悲鳴が上がり……。


 そんな騒ぎの中、俺はそっと物陰に身をひそませる。


「……風操フゥゼ


 風属性の初級魔法を発動。

 そよ風を発生させて、炎と煙を食堂のほうへと流し込む。

 すぐに、オーガたちの慌てふためいた足音がやって来た。


「……な、なんだァ!?」「調理場から火がッ!」「火事だァッ!」「おィィ! 誰か水か砂を持ってこいィ!」「酒ならたくさんあるぞォ!」「宝物庫を守れッ!」「窓を開けろッ! 煙を出せッ!」「人間どもを働かせろッ!」


 混乱するオーガたちは、ばらばらと分かれて行動を始める。

 立ち込める煙で、お互いの姿はよく見えていないらしい。


 そして――隠れ潜んでいる俺のことも、見えていない。

 炎と煙と爆音が、こちらの気配を完全に消してくれていた。


「……風操(フゥゼ)


 俺は指をくいっと動かしながら、最後尾にいたオーガの顔の辺りへと煙を流す。

 この“風操フゥゼ”は初級魔法とはいっても、俺のもっとも得意な風属性魔法だ。

 オーガの鼻や口の中へと、強引に煙を流し込むぐらいは簡単にできる。


「……げほォッ! ごほォッ! くそッ、なんだってんだ!?」


 オーガが背中を丸めてひどく咳き込んだ。

 煙を吸いすぎて軽く中毒反応も出ているらしく、ふらふらとよろめく。


(……隙だらけだな)


 狩られる経験がないがゆえの――ここがすでに戦場だと気づいていないがゆえの無防備さだろう。

 もちろん、その隙を見逃してやるわけがない。


「……肉体強化(バ・ベルク)……物質強化(ミ・ベルク)


 強化魔法を発動しながら、俺はその丸まった背中へと飛び乗った。

 そして、ナイフを振りかぶる――。


「…………あァ?」


 オーガが俺に気づいたのか、ばっとこちらを振り向き――その勢いのまま首がぐるんと一回転して、ぼとりと床に落ちた。



(……これで2匹)



 さっきよりも力が上がったことで、簡単にオーガを狩ることができた。

 レベル1では首の骨を切断することはできなかったはずだ。

 魔力にもまだ少し余裕がある。


(……やっぱり、レベルアップの恩恵は大きいな)


 それから先ほどのように、オーガのレベル刻印から青白い光が浮かび上がり、俺の手の甲へと吸い込まれていく。

 手の甲の紋章が示すレベルが、5から7へとさらに上がる。

 まだ正面からオーガと対峙するには心もとないレベルだが、不意をついて倒すなら充分なレベルだろう。


(さて、この町から出る前に、どれだけレベルを上げられるかな)


 にぃぃ……と、口元がとつり上がるのを抑えることはできない。

 この日をどれだけ待ち望んでいたか。


 この18年間、オーガたちに大人しく支配されてきたのは……全てこの日のため。

 オーガを狩り尽くし、最高の形で町から脱出するためだ。

 この町は、もはや――いい狩り場でしかない。



「……なッ!?」



 ふたたび物陰にひそんでいると、やがて酒樽を持ったオーガが戻ってきた。


「お、おい……ッ!? し、死んでる……!?」


 身をかがめたオーガが、仲間の死体を見つけてうろたえる。


「な、なんだァ……? なにが起こってる? なんで殺されてる……? いったい、なにが…………ここに、いる?」


 すっかり怯えきった様子だ。

 やはり、オーガたちは今まで“狩られる側”に立ったことがないのだろう。


 しかし……この世は食うか食われるかだ。

 弱いままでは、いつまでも食う側ではいられない。

 正義だとか、優しさだとか、美しさだとか……そんなものは関係ない。


 強いやつが食い、弱いやつが食われる。

 食わなきゃ、食われる。

 それならば――。



(…………俺が、“食う側”になってやる)



 俺は舌なめずりをしながら、オーガの背後に忍び寄った。

 オーガはまだ、こちらに気づかない。

 俺は、そっとナイフを振りかぶる……。




 ――――さぁ、レベル上げの時間だ。





「いいね!」と思っていただけましたら、

広告下にある「☆☆☆☆☆」から応援してもらえると助かります!


……いや、本当に助かります。かなり切実に……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『世界最強の魔女』11/7、漫画10巻発売!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

漫画ページはこちら↓
i595023i595023

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『ラスボス、やめてみた』漫画7巻発売!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

漫画ページはこちら↓
i595023

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『時魔術士』漫画3巻発売!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

漫画ページはこちら↓
i595023

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『レベルアップ』漫画5巻発売!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

漫画ページはこちら↓
i595023

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『装備枠ゼロの最強剣士』漫画7巻発売!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

漫画ページはこちら↓
i595023
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ