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この世界で俺だけが【レベルアップ】を知っている(Web版)  作者: 坂木持丸
第5章 絶対王声都市

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23話 鳥かご都市


 それから3日間、川沿いに森を進んでいき。

 やがて、海辺に出たところで、その都市は見えてきた。


「……でかいとは聞いてたが」


『近づいてみると、予想以上にでかいわね……』


 前世基準で言うと、小国の都ぐらいのサイズはあるかもしれない。

 そんな規模の都市が、背の高い鉄柵の中にすっぽりと収まっていた。


「ここは城壁じゃなくて柵なのか。これじゃあ、わりと簡単に登れそうだな」


 柵が内側に反っているため登りにくいかもしれないが、人間を閉じ込めるにしては心もとない。なんなら、頑張ればこの柵を壊すこともできそうだ。


「なんか檻としての機能よりも、デザイン面を重視して作られてるって感じだな」


『ま、こういうところ、管理者かいぬしの趣味が出るわよね』


「趣味で決まるのかよ」


『人間をちゃんと管理できるなら、あとはなんでもいいってことよ』


「けっこう適当だな」


『その分、人間を脱走させたりしたら罰も厳しいって言うけど』


「へぇ。それじゃあ、ここの管理者とやらは、ずいぶん管理に自信があるってことか」


『わたしの名推理によると……たぶん、ここを管理してるのは鳥系の魔物ね。なんか柵が鳥かごっぽいし』


「そうか?」


 だが、言われてみれば鳥かごを模している、と言えなくもない気がしてくる。

 上部が内側に反っているのが、とくに鳥かごっぽさを演出しているというか。


「でも、鳥かごっぽいと、なんで鳥系の魔物だってわかるんだ?」


『鳥系の魔物にとっては鳥かごは支配の象徴なのよ。ソースは、わたし』


「そういえば、お前も炎で鳥かごを作ってたな」


『ふふ、なかなか出来がよかったでしょう? ……仕事が退屈すぎて、数百年ぐらい炎でインテリアとか作ってたから……』


「働けよ」


 というか、鳥系の魔物がいるってわかってたなら、もっと早く言ってほしかった。

 魔物は夜行性が多いからあえて昼に接近したのに、鳥系の魔物はほとんどが昼行性だ。これでは意味がない。


 とはいえ、フィーコとは完全な協力関係でもないから、そんなにサービス精神を求めることはできないが。

 それはそうと。


「……しかし、監視がここまでないと逆に気味悪いな」


 辺りを見るが、やっぱり監視の魔物はいない。

 俺がいた町は、オーガに四六時中監視されていたから、なんだか違和感がすごい。

 こんな柵なんて、レベル1の人間でもよじ登れると思うのだが。


『よっぽど人間の管理に自信があるんでしょうね』


「まぁ、ここで考えていても仕方がないか――風王脚(フゥゼ・デルタ)


 風属性の上級付与魔法で、足に魔法の風をまとわせて飛び上がった。

 宙を蹴ってさらに高くへ飛び、柵を越える。

 最後に軽く宙を蹴って、着地の衝撃と音を消せば……。


「はい、侵入成功……と」


『あっさり入れたわね。一悶着あったら面白かったのに……つまんないわ』


「いや、あまりにもあっさりすぎる気もするが……」


 監視がないにしても、侵入すればどこかから魔物が飛んでくることも考えていたが……そういう気配もない。


「……こんなの入りたい放題じゃないか」


『ま、わざわざ侵入したがるのなんて、あなたぐらいでしょ。せっかく養殖場から脱出した人間がわざわざ別の養殖場に入ってくるなんて、さすがに誰も想定してないわ』


「でも、ここまで簡単に出入りできると、オーガの町から脱出するのに苦労したのがアホらしくなってくるな……」


 それはそうと。


「とりあえず、魔物を探すか」


 この町に入った理由は、ただ1つ。

 魔物を狩ってレベルを上げるためだ。

 フィーコレベルの追っ手と衝突するのも時間の問題だろうし、早いうちに超級魔法が使えるようになるレベル70まで上げたいところだ。


「まずは、そこらの人間に聞き込みでもするか」


『そうね』


 そんなこんなで、俺は町の通りへと出ていき――。



「…………は?」



 思わず、足を止めた。

 俺の目に入ってきたのは――美しい町だった。


 清潔で、綺麗で、色彩も豊か。

 町ゆく人たちの服装も、ちゃんと洗練されている印象がある。


「外から見て、綺麗な町だなとは思っていたが……ここまでだとはな」


『……ほ、本当に、ここの人間は家畜化されてるのかしら?』


 魔物であるフィーコでさえも戸惑う光景らしい。

 ここにいる人間は家畜というには、あまりにも豊かな暮らしをしているように見える。

 むしろ、魔物の支配下にないはずの俺の格好のほうが、みすぼらしくて浮いているほどだ。


 しかし、なぜだろうか。どこか……嘘っぽい。

 その違和感の正体はすぐにわかった。



「……」「…………」「……」「………………」「…………」「……」「………………」「……」「…………」「………………」「……」「……」「…………」「……」「…………」「………………………………」「……」「………………」「……」「……………………』「…………」「……」「……………………」「……」「……」「…………………………」



 誰も、なにもしゃべっていないのだ。

 談笑しているらしき人々も、口を動かしているが……無言。


 死んだ目で、顔に笑顔の失敗作のようなものを貼りつけているだけだ。

 その様子は、外見だけを作り込んだドールハウスを思わせた。


「…………なんだ、この町は?」



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