一、遠い地での始まり
はじめまして。
よろしくお願いします((。´・ω・)。´_ _))
東の果てに三国と呼ばれる国はあった。
泡島、赤熔島、大蛇島の大きい三島を中心に数多の小島が集まった列島国故に三国と呼ばれた。
少し離れた大陸には総国や夕国の大国があったが、小国である三国は1度も侵略を受けた事はなかった。だが強かったからではない。
ある時、三国に1人の男が流れ着く。
三国より遥か西の教竺国を目指していたが、途中嵐に遭い漂流の末に三国に到着したようであった。
男が助けを求めると、三国の民は快く応じた。男は驚きを隠せなかった。民の警戒心の薄さ、農地の豊かさ、金や銀を平民が貨幣として使える程の鉱物資源の豊富さ。
男は三国を宝島と称した。
傷が癒え、男は自国へ帰ると、宝島があったと己の経験を面白可笑しく吹聴した。
いつしか王様の耳にもその話は届いた。
王様は男に、自国の民を救ってくれた三国に感謝の意を込め訪問したい、と告げると男は感じ入って三国への道案内を買って出た。
そして王様は数万の兵と共に三国へと向かった。航海中、男は王様に三国がいかに素晴らしい国であるかを話して聞かせた。王様は笑顔で相槌をうち、男の話をそれは楽しそうに聴き続けた。
そうしてとうとう三国へと到着すると、王様はいきなり砲台で攻撃をし始めた。
王様はとても欲深かったのである。
男は反論するも小舟に乗せられ海に流された。
しかし砲撃は三国には届かなかった。
見えない壁にと阻まれたのだ。
王様はむきになって攻撃を指示した。だが海から現れた黒亀によって船は転覆してしまった。
更に空から赤鳥が舞い降り、大地から白虎が顕現し、風に乗り青龍が駆けてきた。
三国は1度も侵略を受けた事がなかったが、それは強かったからではない。護りに優れていたからである。
三国は4匹の魔獣によって護られていたのだ。
その後王様は命辛々逃げのびるも、自国にて病を患い亡くなったという。
それから人々は三国に手を出せば呪い殺されると噂するようになった。
***
「なぁ、レリ。その三国の話は何処までが本当なんだ?」
「さぁ、どうなんでしょうね。なにせ私が産まれた時にはもうこの"男"は亡くなっておりましたからね」
ポロロン…とリュートを鳴らして、レリと呼ばれた男は曲を締めた。
「なんです、殿下。“宝島"が欲しくなりましたか?」
そうして殿下は思案顔で顎を撫でると、斜め上を見た。青銀の髪がサラリと流れる。
「いや、魔法研究者としては防御結界魔法の規模と構成が気になる。どうやって魔獣を結界に組み込んでるんだろう?最近は特に周辺国がキナ臭いし、出来る事なら我が国でも展開したい」
「あー…フリールとディベルートがねぇ。手を組んでちょっかい出してきそうな雰囲気ですよねぇ」
「三国に魔法学校はあるのかな?留学生の受け入れはしてないかなぁ?」
「と、言いますか遠い国との国交自体、ここ20〜30年の事だったと思いますが。私も総国までしか行ったことがないので、あんまり詳しくないんですよね」
侍従がをお茶を運んできたので、2人で口を付ける。
「三国…行ってみようかな」
「片道2ヶ月はかかりますよ?行って研究している間に、戦争が始まって終結してるんじゃないですか?」
冗談めかしてレリが言う。
研究に没頭すると周りが見えなくなるところがあるので、それはないと言えず苦笑する。
「そしたらそれはそれで兄上がなんとかするさ。優れた結界魔法は後世に残せるし、ちょっと陛下に相談してみるわ」
「その時は私もご一緒させて下さい。まだ見ぬ土地に、まだ知らぬ話。吟遊詩人の血が騒ぎます」
「それは心強い。是非頼もう」