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食文化破壊丼


 ネットの世界を旅していると、かくも色々と余計な知識も身に着けてしまうものである。

 例えばとあるグルメ漫画のひとくだりなんかを。確かになんでもマヨネーズをかけておけば良いという訳ではない事は百どころか千も万も承知している。


 だけど、そのマヨネーズという魅力には耐えがたい。

 そりゃそうだ。一昔前にマヨチュッチュなんて形容詞が爆誕するぐらい、マヨネーズというのは病みつきになるだけの戦闘力を持ってる。

 更にマヨネーズに卵ましましでタルタルソースになるという法則を鑑みるに、卵という土台が偉大なのか、マヨネーズというブースターが偉大なのか。

 卵が先か鶏が先かという言葉があるが多分最初からどっちもあったんだと思う事にしてしまえばいいのに。

 どっちが起源かで人は争うものだけれども、どっちも始まりという選択肢をなかなか選べないのは人の業か、あるいは見栄か。それが人間、それも人間。

 争うのも人だし、手を取り合うのも人だ。



 このマヨネーズという力強さを借りよう。

 夕飯を食べて数時間、小腹がすいた夜。

 握りこぶしよりは二回りは小さいご飯で小腹を満たすのに、小腹満たせるほどの力強さをご飯に与える為に、マヨネーズをくれ。


 食文化の破壊者だなんて言われても知るか。

 この空腹に勝てればよかろうなのだ。


 冷ご飯をレンジに放り込んで温めてる間に、このマヨネーズを引き立てるための具が必要だ。

 そんな時に嬉しいのが、タッパーに既に用意されている、常備菜の野菜。

 キャベツの千切り、茹でたもやし、どっちもマヨネーズをかけて食べるだろう。だけどここはキャベツの千切りで良いと思う。

 なんだって、キャベツの千切りだ。

 マヨネーズと仲良くない筈ない。


 かくして温まったご飯の上に、キャベツの千切りを、乗せていく。前述のとおり茹でたもやしでもよいけど、キャベツの千切りの方がマヨネーズとは繋がりやすい。

 三人トリオをそろえても三人の中の相性云々というのがあるけれど、キャベツの千切りならば色んな奴とも仲良くできるだろう。そうでなきゃトンカツにアジフライ、エビフライ、コロッケと方向性のまるで違うフライ達全ての相棒をこなせるような存在である筈がない。

 フライといえばキャベツの千切り、キャベツの千切りといえばフライがどこかにいる。

 そういうものレベルだ。

 だけど今夜はキャベツの千切り、君が具だ。


 好きなVtuberが歌っていた曲のサビで、君と二回繰り返すのが印象的だった。

 それに倣ってキャベツよ、君が今日の具で、マヨネーズと共に走る主役だ。

 おいしくなーれとか言ってハートマークを付けたりはしないよ?

 キャベツの上にマヨネーズを、好きなだけかけてから。最後に後を追いかけるのはひとまわしのポン酢。


 ポン酢だ。

 酢の入っているマヨネーズの後からなんでさらにポン酢かと思えば、マヨネーズのまろやかさにポン酢の純粋な酸味が必要だからだ。

 これは具がキャベツでももやしでも大事なファクターだ。そして、最後に。


 これが食文化破壊丼が食文化破壊丼たる故だ。


 それがなければ完成しない。

 丼でも、混ぜるのだ。

 丼は混ぜないものだ、と人の多くは言うだろう。故に食文化破壊丼なのだ。

 それでもキャベツのマヨネーズとポン酢が、純白のご飯の中で混ざって点在する状態になって完成する。だから僕らが持っていた食文化の丼という概念を破壊するのが食文化破壊丼だ。


 いただきます。

 少ないご飯でも、キャベツの歯触りとマヨネーズとポン酢。

 しっかりご飯が進む味で、食べている感覚がある。胃の腑に、入っていく。

 美味い。

 見かけは破壊された後のようにも見える。食文化破壊丼だ。

 世界中のマヨラーが評価するだろうか。いや、本当のマヨラーは物足りないと嘆くだろうか。


 そもそも食文化破壊丼は丼一杯も食べるものではないかも知れない。

 少なくとも丼で作るより、茶碗で食べるぐらいがおいしいしちょうどよい。

 だからそういう事にしてしまおう。

 小腹を満たす為だけの、想像を投影したマヨネーズの力強さか、いや、数多くの料理で相棒として動き続けてきたキャベツの千切りや茹でもやしが、主役の具として輝く為の夢か。

 いいや、夢じゃない。


 マヨネーズだらけの空の茶碗が、そこにいた事を物語っている。


 タッパーに残る千切りキャベツはまた明日、なにかの料理の相棒としてやってくるんだろう。

 だけど、今夜ぐらいはマヨネーズと共に主役として、輝かせてやろう。

 Lucky Starは、マヨネーズが運んできただろ?



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