サンタナ
東京の夏は、暑い。
インド人もアフリカ人も暑いというぐらいに、暑い。
ビルが立ち並び過ぎて土も見えない東京のコンクリートジャングルには、風も抜けない。風も吹かない、だから暑い。
日本で一番暑かったのは熊谷か前橋かは忘れたけれど、それでも気温三十度超えが、何日も、夜でも続くのはたまったもんじゃない。
きっとこのまま寝たら寝苦しいから、何か飲んで眠ろう。
星を追いかけるのも、妄想の海をかき分けるのも、お気に入りの音楽を聴きながらでもいい。
インド人を右にする勢いで眠りの世界に進むのに、酒もまた立派な燃料だ。
こんな暑い夏の夜に、ぴったりな組み合わせがある。
本当にただの、組み合わせでしかないけれど。
麦焼酎の、いいちこパーソン。別に中身が同じいいちこシルエットでもいい。
最近、近所でいいちこパーソンをなかなか見かけないからいいちこシルエットで作る事が多くなった。
だけどいいちこパーソンの方なのは、あのスキットルにも通じた少し曲がった綺麗なガラス瓶が気に入っているのと、300mlという量が早めに飲みきれる量だから、というのもある。
氷を入れたグラスに少し注いで、それを炭酸水で割る。
酒好きだけど下戸な自分の好みもあるが、暑い夏の夜に涼を感じさせる為なら炭酸水は多めな方がいい。五対一ぐらい。炭酸水が五で。
それに合わせるおつまみ、これがこの組み合わせたる由縁。
湖池屋のドンタコス。
トルティーヤチップスの、ドンタコス、チリタコス味だ。焼きトウモロコシ味であってはならない、チリタコス味だ。
いいちこパーソンの炭酸水割、そしてドンタコスのチリタコス味。
熱い夏の夜に、眠りへの時間を過ごすのに、ぴったりな味。これぞサンタナ。
大分の自然の中で、メキシコの風が吹く。まさにサンタナ。
麦焼酎という自己主張し過ぎない、そして優しいすっきり感を感じるいいちこパーソンに炭酸の激しさが喉に涼を届けて、そこにチリ味のぴりっとした、辛味と酸味が引き締め、トルティーヤチップスのトウモロコシの軽さが、後を引かせる。
二杯目に入っても変わらない、激しいオルタナティブロックを聴いてもいい、お気に入りの映画なんかを再生してもいい、旅を感じたいなら旅スレのまとめなんかを読みながらでもいいかも知れない。
何をしてたって、背景にメキシコの風と大分の自然を感じさせることができるだろう。
なぜ、サンタナって呼んでるかって?
ジョジョの奇妙な冒険で二部が好きだったからだろう。でも、それでも大分生まれの麦焼酎の奥にある、大分の自然風景の中で。
ソンブレロを被ってポンチョを着てマラカスを持ったメキシコの風が吹いたっていい。
そういうものなんだ。
別に同じトルティーヤチップスのチリタコス味ならドリトスのタコス味でも良いとは思う。
でも、ドンタコスの方が軽いから、風のように感じる。
ドリトスだったらサンタナじゃなくてエシディシか、いや、ワムウか?
ドリトス自体は世界中でつまみとして愛されているからカーズって名付けたっていいかも知れない。
まあ、ジョジョの奇妙な冒険が好きな人でもないと。
いや、好きな人だってこの由来についてしゃべったら苦笑いで受け止められる程度なのかも知れない。
だけど、いいちこパーソンの炭酸水割をドンタコスのチリタコス味で楽しむのは。
サンタナと名付けよう。大分の自然にメキシコの風を吹かせよう。
そう感じるのが良いんだ。
東京の暑いコンクリートジャングルの中でも、大分の自然にメキシコの風が吹くのが見えるんだ。
それでいいんだ。
サンタナと名付けよう。
たぶん、画面の向こうでこれを読んで笑ってるやつが一人ぐらいいるんじゃないかなとは思ってる。
そう思って、三杯目に入る。
ドンタコスはもう半分以上食べ尽くしてしまっているし、炭酸水のボトルもこれぐらいで空になる。
これで最後にしよう。
酔いが回って眠気も出てくるだろうし。今日あけたいいちこパーソンのボトルも三分の二ぐらいは残ってるから、しっかり蓋を絞めて。
氷がからからとグラスの中で回ると、その向こうでメキシコ人がいいちこパーソンのボトルを手にしているのかも知れない。
やっぱりいいちこパーソンの方がいい。
いいちこシルエットの瓶だと、やっぱりメキシコ人が人造人間14号に見えてきそうだ。あれ、人造人間15号の方だったかな?
どっちか忘れた、まあ、いいや。
ドンタコスの袋はもう空っぽ。グラスに残った残りを飲み干して、ごちそうさま。
眠りの国に行くには良い時間。
そうだな、サンタナを感じながら夢の中で旅をしてみるのもよいかも知れない。
氷河の中でS.S.デッドリィボンバーに追い回されるとか斧を片手にドイツ軍人の足を切り落とす夢だけは勘弁してほしいところだし。
いいちこパーソン(いいちこシルエット)炭酸水割、ドンタコス・チリタコス味を添えて。
サンタナ。