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間に合え!

 アタシの世界は、終わっていない。

 アタシの大好きな世界は、まだ、完全に壊れたわけじゃない。

 だから、アタシは黙って見ていちゃいけない。

 まだに合うんだから。

 アタシは飛び出す。


「違うねん違うねん、間違い! 

 かん違い! 

 とにかく違うんよー!」

 アタシは大きな声を出しながら、2人のあいだに飛び込んで膝から座り込む。

 二人の間の張りつめた空気が小さく揺らぐのを感じながら、立ち上がって優乃ちゃんを抱きしめた。


 申し訳なさ過ぎて顔が見れないから、アタシの全部で強く抱きしめるみたいに右肩に顔を強く押しつけて、謝る。

 謝りまくる。

「ゴメンっ。

 ゴメン、ゴメンなさい、優乃ちゃん。

 優乃ちゃんが優しくしてくれるから、なんか気持ちよかったから、「ちがう」って言うのがおくれてん、ゴメン!

 ゴメン! 

 ゴメンな、優乃ちゃん」



 静寂。

 世界は、止まったみたいに音がしない。


 そのまま、優乃ちゃんの肩に顔を伏せて訴える。

「大河ゴメーン!

 優乃ちゃん悪くない、悪くないんよぉー

 アタシが調子乗った、ごめん、ごめんなァァァァ!!」




「わかった」



 大河の声。

 世界は、アタシの大切な世界は、少しずつざわめきと共に、再び時を刻み始める。



 優乃ちゃんの手が、アタシの背中に触れた。

 片方の手は髪を優しく撫でてくれる。


「ホンマに?

 ホンマに何もなかったん、舞夏ちゃん?」

 アタシは、ぅっと言葉に詰まって、でも正直に言う。

「何も……なかったわけじゃないけど……大河は悪くない……」

 ふっふっふっふっ、と笑うように優乃ちゃんの体が小さく揺れる。

 そして、「ふぅー」と大きく息を吐いて髪を撫でてくれていた手でアタシの頭をポンポンとした。

「そうかぁ。

 わかった」


 優乃ちゃんの優しい声を聞きながら、アタシはたたまれなかった。

 アタシのせいで、こんな大事おおごとになってしまったことだけじゃない。

 動き始めた時間の、少し安堵の混じったざわめきの中に、トゲのある言葉を幾つか聞いたからだ。


「何? カップルのもめ事?」

「時間と場所を考えろよな」

「何様のつもりやねん」

「調子乗ってんちゃうん?」


 ハッキリと聞こえなかったけど、そんな言葉。

 誰に向けてかハッキリさせないのに、敵意があることだけハッキリ伝えようとする囁き。



 さっきまで、自分も傷つくんじゃないかと息を潜めていたクセに。

 もしかしたら自分の声が相手に響くんじゃないかと感じたら動き出す。

 それだって、たくさんの人の中に紛れようとする。

 曖昧にしようとする。

 そんな声たち。





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