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爆弾投下

 何がなんだかわからない。

 でも、「ヤバいヤバいヤバいヤバい……」って言葉が、意識をせずに口から出た。

 アタシは突き飛ばされた人みたいにつんのめって廊下に出た。

 優乃ちゃんは、どこにも見えない。

 アタシの高校は、四階建ての長い校舎が一つ。

 おトイレなら教室を出て右。

 左側にあるのは、校舎の中央部の階段。


 大河のクラスは一つ上の階にある。

 直感的に頭に浮かんだ。


 アタシは不安でフワフワする体に気合いを入れて走る。

 中央部の階段。

 優乃ちゃんは、まだ見えない。

 ちよっと四つん這い気味ぎみに階段に触れたりしながら、アタシは駆け上がる。

 もうすぐ上の階に到着しそうになった時、大きな音が響いた。


 バァーンっ!!!!


 教室の入り口の戸を、枠の柱に叩きつけるみたいに開けた音だ。

 気合いを入れたハズのアタシの足から、フニャフニャとちからが抜けかける。

 思い出した。

 優乃ちゃんのエピソードを教えてくれた男子の言葉。


 優乃ちゃんは上級生の家に文句を言いに行ったんじゃない。

 正確には、怒鳴り込んだのだ。


「それ以来いらい木原なあ、中学ン時は、『ばくだん』って呼ばれとったんよ」


 それらの情報は、アタシの知ってる優乃ちゃんのイメージとはかけはなれすぎていて、頭の中で勝手に修正を加えて、記憶の底にしまい込んでいた。


 そして、今、『爆弾』は大河のクラスに投下されたのだろう、きっと。


 大河のクラスは階段を上がって左に三クラス目。

 アタシはフルマラソンを走った選手みたいに、ヨレヨレで大河のクラスにたどり着く。


 大河の教室の中。

 優乃ちゃんはいた。


 座ってる大河の席は、クラスの中央からやや後ろぐらいだった。

 優乃ちゃんは、そのまえに立っていた。

 大河から前の席の机と椅子の列は、優乃ちゃんを頂点にしてブイ字に切り裂くように開いていた。

 優乃ちゃんが押しのけるようにして進んだのかも知れない。

 クラスにはたくさん2年生がいて、優乃ちゃんが机を押し退けたせいで立っているらしい男子の先輩もいるのに、誰も何も言わない。

 言わないどころか、息を潜めているみたいだった。

 よほどの勢いでクラスに乗り込んだに違いない。


「西畑せんぱ──い……」

 優乃ちゃんの声が太く大きい。

 お腹から出てる声ってやつだ。

 ドラマで観た、借金取りが訪ねてきた時の挨拶みたいな、上からとろのある熱い熱いスープをゆっくりたっぷり注ぎかけるみたいなイントネーションで、大河を呼んだ。

 怖い。

 アタシの知らない優乃ちゃん。


 大河は困ったような顔をしてた。

 リアクションの取り方の判断がつかないみたいだ。

 ごめんね、大河。

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