涙がね、落ちたのよ
とにかく、親友だと信じていた女のコが、発達コンプレックスなのを知ったうえで発達自慢をしてきたのではないことがわかって、ちょっと安心。
アタシが恋愛勝者だと思って、話してもイヤミにならないと思って、話してくれたんだ。
だったら、アタシの役割は一つ。
友だちとして、思いっきり羨ましがってあげるべきだ、ここは。
「いいなー、Gなんや優乃ちゃん、いいなー」
「エヘヘヘヘ、ありがとう舞夏ちゃん」
「優乃ちゃん、どんな感じなんか触ってもいい?」
「え?ヤダァ舞夏ちゃん、ウフフフフ」
でも、アタシのリアクションは半分以上は本気だ。
アタシと大河は公認カップルみたいになっているが、実は、ずっと、ちゃんと「好きだ」と言ってもらった記憶が……………ない。
それなのにこの間、大河の部屋で、エッチなDVDを見つけたのだ。
からかってイジメてやるつもりだったけど、そのDVDの女のコがアタシと正反対のタイプなことに気づいたアタシはショックを受けて、バカバカしいと笑われるかも知れないけど、泣いたのだ。
大河に隠れて。
自分の部屋で。
DVDのパッケージに載っていた女の人はスラリと背が高くて、胸なんか「これでもかぁ!!!!」ってボリュームの、しっとりとしたお姉さん系の美人で、アタシとは重なる要素も似てる要素もなかった。
アタシの中の、ずっと目を逸らしていた不安が大きく、大きく、揺れに揺れた。
大河はアタシを傷つけない。
大河はアタシにひどいことはしない。
だからずっと、アタシが大河の理想とは全然離れてしまっていたことに気づけずにいたのかな?
ずっと幸せだと思ってたけど、大河の優しさの中で、ホントはアタシは独りぼっちだったのかな?
そう思ったら涙が止まらなかった。
だけど、ずっと優しくいてくれた大河を困らせたくなくて、アタシは自分家の部屋に戻って声を殺して泣いたのだ。
だから、優乃ちゃんは照れてキャハキャハ笑ってるけど、アタシの「いいなぁー」はけっこー大マジ。
大マジなものだから、
「あ…………」
「え?舞夏ちゃん?………」
ポトリと涙が落ちてしまった。
「あ、いや、違うねん、アハッアハッアハハハ」
アタシは焦ってごまかし笑いをするけど、落ちた涙はポタリ、ポタポタとお友だちを呼ぶからアタシはくぅ~ぅって、俯いて頬を濡らすしかできなくなる。
「舞夏ちゃん!? 舞夏ちゃん?」
優乃ちゃんがアタシの顔をのぞき込む。
アタシが何も言わないでいると、アタシを引き寄せてギュ──ッと胸元に抱きしめた。