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大河とアタシのこと

「今朝はあんなことをしてしもーたけど、アタシ、西畑先輩のこと尊敬してるし」

 と、優乃ちゃんは突然なことを言う。

「え?

 ああ、そーなんや?」

 アタシは答えて、そうか、優乃ちゃんもかぁと思う。


 大河とアタシがみんなの公認のカップルみたいな扱いなのは、実は理由がある。

 アタシと大河は12年前に事件に巻き込まれたのだ。

 幼稚園からの帰り道、アタシは不審な男に連れ去られそうになった。

 それは、結局、騒ぎを聞きつけた、近所で道路工事をしていたおじさんたちが駆けつけてくれて、男を取り押さえて、アタシは無事に何事もなく助かった。


 でも、アタシが無事だったのは、おじさんたちのおかげだけじゃない。


 おじさんたちが駆けつけるまでの数分間、幼い大河が、アタシを守り抜いたのだ。

 体中を骨折し、夏休みをまるまる病院で過ごすような大ケガを負わされる目にいながら、アタシを連れ去ろうとする男に必死に立ち向かって、アタシの無事を確認して、意識を失った。

 アタシの腕の中で。


 その一部始終は近所の防犯カメラに写り込んでいて、1度だけニュース番組で流された後、今はネットの中に映像が残されている。

 今でも、時々、雑誌で紹介される。

 『ネットで視れる残酷映像』として。


 犯人の男は30歳を少し過ぎたぐらい、幼い女の子に対して、やはり別の事件を起こした前科があった。

 ただ、アタシたちは、そんなことを知っていたワケじゃない。

 知らないオジさんにいきなり手を引かれたことにアタシはおびえ、アタシの泣き声に大河は反応した。

 アタシから男を引き離そうとする大河に、男は迷いなく全力で暴力を振るった。

 自分の腰のベルトよりも身長の低い男の子に、だ。

 全力で。


 アタシは、その映像を視たことがある。

 いや、実は、今でも大河を近くに感じたい時なんかに、何度も視返したりしている。


 視るたびに、胸が絞めつけられる。

 涙が止まらなくなる。

 自分の意志で視ているのに、視終わった後、頭を抱えて泣きじゃくってしまう。

 それだけのものが、その映像にはある。


 ヒトは、ヒトに対してあんなにヒドいことができるのだ。

 幼い命に対して、あんなに残虐なことができるんだ。


 大河は思い切りアスファルトに叩きつけられていた。

 男の拳は全力で振り抜かれていた。

 それは溜めもリズムも無く、激しい川の流れのように、幼い大河に振り注がれていた。


 


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