職員室に呼び出し
ここで引いてしまったら、認めてしまったら、今日以降、アタシは優乃ちゃんの“妹”になってしまう。
だけど、アタシには訂正するきっかけも材料も無くて、くうぅ~と、やるせない気持ちになる。
「じゃあ行こか」
今度は優乃ちゃんがアタシの手を優しく引いて、教室に向かう。
アタシは心の中で「くうぅ~」「くうぅ~」と抗議の声を挙げるけど、それはこの世の誰にも届かない。
だから教室に帰ってからも、アタシは授業中も休み時間も机に顔を伏せてグニグニしながら、声にならない抗議を表明して過ごす。
だけど優乃ちゃんはアタシが甘えて勘違いを生んでしまったことを悔やんでると思ったみたいで、休み時間にはアタシの席の前に座って、「もう気にせんでエエんやで?」と優しく頭を撫でてくれる。
違うねん。
違うねん、優乃ちゃん。
そーゆーことじゃ無いねん。
そーやってモヤモヤ過ごしていて、お昼休みにアタシはビクン!となった。
校内アナウンス。
ぼんやりと聞いていたら「……組の西畑大河クン」と来た。
アタシが心の中で
「え? え? 大河?
大河がどーしたん?」
と驚いているとアナウンスは「それから一年六組の……」と続いて「榎本舞夏さん、木原優乃さん」と名前が呼ばれる。
「至急、職員室に来てください」
アタシが顔を上げると、優乃ちゃんはちゃんとアタシの前の席に座っていて、驚いた顔でアタシを見る。
驚いたと言っても、何の話かは心当たりがある。
今朝のアレだ。
あの騒ぎを、大河のクラスの誰かが、先生に言いつけたに違いない。
アタシと優乃ちゃんは、スグに立ち上がって職員室に向かう。
ちょっと動揺していて言葉らしい言葉は交わさなかったけど、なんとなく無意識に手をつないだ。
職員室の前には大河が待っていて、アタシは顔を斜めに傾けながら、もう一度“申し訳ありませんフェイス”を送る。
大河は笑いもツッコミもせずに「入るぞ」と職員室の戸を開ける。
ツッコんでください。
ツッコんでくださいよ、大河。
「おう!
コッチや」
アタシたちの姿を見て声を挙げたのは大河のクラスの担任の荒木先生じゃなくて、体育の先生で生徒指導の二岡先生だった。
アダ名は“首っちゃん”。
背が高くて、少し鼻が大きいけどまあ男前の二岡先生は、何の目的でどう鍛えたらそうなったのかわからないけれど、顔の横幅とまったく同じ太さの首をしていた。
だからアダ名は“首っちゃん”。




