表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/16

ヘコヘコ、ペコペコ

 優乃ちゃんが大河の教室に乗り込んだのは予想外だったけど、全部の始まりは、アタシの甘えのせいなのだ。

 アタシのせいで、優乃ちゃんは敵意にさらされることになったのだ。

 ごめんなさい、優乃ちゃん。

 だけど優乃ちゃんはアタシを責めない。

「ちょっとゴメン、舞夏ちゃん」

 優乃ちゃんは優しく言って、アタシを離した。

 そしてストン!と膝を着いた。

 武道をたしなんでいる人らしい、綺麗な正座。


「西畑先輩、それから先輩の皆様、申し訳ありませんでした」


 媚びも怯えもなかった。

 毅然とした発声だった。

 だけど、きっと、それを反省が無いと責める人は、誰もいないだろうとアタシは思った。

 武道家らしい、心からの覚悟の込もった言葉。

 それは正座姿と同じく、美しかった。

 そして、優乃ちゃんの体は、そのまま前へと傾いた。


「うわぁぁぁぁぁ! それは違う!

 違うぞ、木原ちゃん!」

「アカァン、優乃ちゃん!

 待ってェェェ!」


 アタシと大河は同時に叫んで、まるで2階から落ちた赤ん坊を咄嗟に受け止めようとする人みたいに、優乃ちゃんに飛びついた。

 優乃ちゃんは土下座して謝罪しようとしていた。

 そんなこと、絶対にさせない!


 大河の方が先に両手で優乃ちゃんの肩に手を添えて、上半身の傾きを止めた。

 アタシはそれを確認してビッ!と立ち上がり、「すいません、すいません、すいませんでしたぁ」と乱れた机と椅子の並びを、並べ直した。

 優乃ちゃんを惨めな姿になんかさせない。

 優乃ちゃんの、申し訳ないという気が済まないなら、その分をアタシと大河が全部埋めて、謝罪の気持ちを現してみせる。


「木原ちゃん、それは待ってくれ。

 それは違うよ」

 大河が優乃ちゃんの目を見て思いとどまらせようしていて、アタシはヘコヘコ机と椅子を直していく。

 アタシにだけそんなことはさせられないと思ったのか、優乃ちゃんも立ち上がって「すいませんでした、すいません」と机と椅子を直す。

 大河も、もう大丈夫って思ったようで、「ゴメンな、ホンマ、みんなゴメンな」と机と椅子を直し始めた。


「そうや!

 西畑がみんな悪いぞォ!」

 男子の声が、茶化すように大きく響いた。

 伊東先輩。

 大河と仲良し。

 だから、雰囲気を笑いに変えようと援護してくれたんだと思う。

 実際、笑い声が挙がって、空気がやららいだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ