壊すモノ 廻すモノ
ゆらゆら ゆらゆら
現実から逃げ惑い
裏側に隠れ
すべてを忘れて
ここまで幾星霜
向こうに戻れば淀みがあり
此方に居れば苦しみがある
迎え 向かえ
我は全てに怒るモノ...
目が覚める。
今日は現実で誰も起きない。僕だけ。
「...。」
いつもと違う天井。
「(家じゃないのか。そうか、社寮か。)」
6時前の窓際、二段ベッドの上で久しぶりの元の体をゆっくりと起こす。朝日が柔くカーテンの裏から差し込んで、回りにいる同居人たちの寝顔を浮かび上がらせていた。
こっそりと日付を確認する。
「(今日は休みか。なら寝てていいな。)」
また布団に潜る。そして帰っていく、体を子供たちに明け渡して。
ーEarthの桜が真っ赤なのはどうして?
ーそれは記憶がまだ残っているからよ。
ーどんな記憶?
ーあの場所はね、私達祖先同士の醜い争いがあったの。そこでは国ひとつ失くなってしまうくらいの人間が死んだの。
ーどれくらい?
ー今のMarsくらいの人ね。
ー凄く多い!
ー死んだ人たちは土に還ったはずだったわ。はずだったのだけれど。
ーどうしたの?お母さん?
ー...あの桜の花の色はね。私達より前にいた人間、真っ赤な血の色にものすごく似ているの。
「あの場所を掘り返してはなりません。下には紅い宝石に生え埋もれた死体があるんですって。」
「まぁ恐ろしい!急に森ができて、不気味ねぇ。」
「...呪いらしいわよ。」
「な、なんの?」
「青い薔薇の創造主の呪い、なんですって。」
手紙が届いた。
最近待ち遠しくて、居てもたっても居られなくなっていた。
しかしまぁ最近は
「お、届いた?どれどれ?」
「いいなぁお手紙!何を話しているんですか?」
「わ、私にも見せてよー!」
「うっっっるっせぇ!!離れろこんにゃろうどもめが!!」
子供たち、管理者たちが来るようになってしまった。読もうにも皆覗き込んで、集中できない。
「ええい、僕は帰るぞ!」
会議室で読もうとしたのが間違いだった。
闇の間で、そっと封筒を開く。
「あれ、漢字がないや。」
相手が察したのか、難しい漢字はなく、ひらがなの多い文章だった。
「うーん、僕の手紙ってこんな風に見えるのか...。」
暗い。
くらい?
扉は開かない。なにもない鉄の部屋。窓もない。灯りもない。
なにもない。
なにも、ない?
言葉がわからない。字も書けない。礼儀もしっかりと出来ない。
鷹から生まれた鳶の子。
ーこんな無能な子うちの子じゃない。
ーなんで弟は出来るのに貴方はできないの?
ごめんなさい。
どうしても出来ない。変な声、鏡文字、挙動不審。
ー...こんな子供なら産むんじゃなかったわ。
「知ってるよ。そんなの。お前なんかに愛されなくったって、誰にも好かれなくたって体は生かされてるんだから。」
愛なんか吐き気がする。
愛してるなんて、最悪の言葉だ。
「人間なんて知らない。」
人として扱われない。別にいい。
物として殴られる。壊れない程度になら、どうでもいい。
存在が消されなければ。
僕が、わたしが、いきる場所があるなら。
「出来る人格を作ればいい。」
「この体が演じていれば生きられる。」
「...僕は疲れた。まぁまだ生まれて6年しか経ってないけどね。」
逃がさない。
「お前は永遠と見続けるんだ。自分が死ぬ様を。それを全て覚えているんだ。それがお前への罰だ。」
逃げた罰だ。
逃げることは悪いこと。
僕は悪い子。
だから、ひとりぼっち。当たり前。
愛さないで
それが一番怖いから。
「...さみしい、か。」
その感情があるだけまだ羨ましいな。
たのしい?
「たのしい...」
しっくり来ない言葉。
「ピント来ないなら違うよ、きっと。」
僕をよく知る分身。13番目。
「じゃぁなんだろう。」
「それは母さんが決めるものさ。」
「宝石は喋るのか?」
「喋らないねぇ。」
「お話しするとか言ってたじゃん。」
「あれは加工するときの例えだよ、調子を見てるとかそういうこと。」
「ふぅん...。」
宝石の魔族と同じだろうか。違うだろうけど。
「なぁ13。」
「ん?」
「これ、二回三角に折って。」
「はい。これでどうするの?」
「あとは僕がやる。」
「あぁ、はいはい。失礼しました~。」
三角に折った手紙。
本当はこんな綺麗な字な紙、折りたくなかったんだけど。
「中に息を...ふぅー。」
息が折られた紙の中に入り込み、ぶわっと紅い花弁が舞う。
「わっ、わっ!」
血かと思った。けれどそれは空中でふっと消えてしまう。
「あれ...。」
もう一度吹き込んで、また舞い散らす。
綺麗。
黒い世界に赤色が舞う。そして儚く消えてしまう。
BRは暫くその手紙で遊んではにこにこして、楽しんでいた。
はいふく
はくめいのつばさ いあさま へ
しかけ、おもしろかった。
とてもきれいだった。ありがとう。
手がみは、まえのでもいまのでも、大じょうぶ。
分しんによんでもらう。もともとこっちの世かいは文字もへんだから、ほんやく?をしてもらう。分かんなかったら、しらべて、おぼえる。
手がみは、ぼくもたのしい。
子どもたちに、すごいうれしそうっていわれた。たぶんそれくらいいい。
ほう石はいろいろあるけど、いっぱいすき。
ぼくの大がまも、青いほう石がついてる。あくあまりん、綺麗だから。子どもの目といっしょ。
ぼくは青がみえない。
だから海もない。
でもきれいなのは知ってる。子どもをおしえてもらった。きらきらしてて、ゆらゆらしていて。
ぼくもみてみたい。
いあさん、なにかみたいものはある?
こんぺきのかべん ぶるーろーずより