ロリコンに不可能はない
宝物庫に転移した俺たちの目の前には黒い壁があった。今はたぶん昼前。それにこの前来た時にはこんなものあったか?
「ん? どこのどいつだ? 俺様の寝床に無断で侵入して来た馬鹿な奴は」
俺たちが上を見るとそこには山羊頭の魔王の顔があった。背中にはお馴染みの巨大なコウモリの羽に下半身はどうやら蛇。更に振り向いてくるとその魔王たる漆黒の鍛え上げられた筋肉があった。
「でけー…」
「これが魔王…」
そういうとユーフィの手が離れた。あ、俺はもうダメだ。いや問題はそこじゃないな。
「なんだ? 弱そうな人間が二人か」
「ちょっと空気を読んでくれ。魔王。ユーフィ、今話したよな?」
「ッ!?」
首を必死に振るユーフィ。しかしこれは最早確定的だろう。
「セクシーランジェリー確定か」
ユーフィが必死に頭を叩いて来るが手遅れだ。すると魔王の尻尾が壁をぶっ壊した。
「…おい。この魔王ダジール様を差し置いて何してやがる」
大変お怒りの様子だ。だが、俺たちの狙いはお前じゃないんだよ!俺は魔王ダジールに手を向ける。これで終わりだ!
「アポーズ!」
決まった…しかしユーフィの妹はいない。俺は手の中身を見ると黒と白の縞パンがあった。
「大好物です! ありがとうございました!」
「なぜ俺様に礼を言う!? 俺様が上げたわけじゃ…ん? おい、貴様。何者だ? 今、俺様が取り込んだ人間に魔法を使ったな?」
やばい…完全に警戒されてしまった。こうなったら、強引に交渉に持ち込んでやる!
「あぁ…そうだ。だが、俺はお前に興味はない! 俺が用があるのはお前が取り込んだ小さな女の子だけだ!」
「あん? あぁ…この王宮にそんな奴が一人いたな。それでどうするつもりだ?」
どうするかだと?そんなの決まっている。
「お前の身体ほじくり出してでも助け出させてもらうぞ! ロリコンの名に掛けて!」
ちょっと言ってみたかった。
「くく…面白い。いいだろう。やれるものならやってみるがいい。ただし俺の体は強力な毒で視界など有りはしない闇だ。更にこの王宮にいた何万の人がいる。果たしてお前などにそんなことが出来るかな?」
「ふ…言ったな?」
俺は邪悪な顔を見せ、服をユーフィに渡す。
「お前はミスを犯した。そしてお前に言っておく。幼女のことにおいてロリコンに不可能はない!」
俺は魔法の体に飛び込んだ。確かに真っ暗で身体中がピリピリする。これが毒か…急がないとな。
俺は迷わず泳ぐ。俺に助けを求めるように捕まってきた傭兵やメイド、王様、王妃、全て殴る蹴るで排除する。俺はロリコン。幼女以外全て平等に暴力を振るう男だ。
その後も俺はまっすぐユーフィの妹を目指す。こいつはさっきこう言った。
『この王宮にそんな奴が一人いたな』
そしてピットの話ではアグス王子たちをこいつは殺している。恐らく封印から目覚めて王宮にいる連中を腹ごしらえで食べたといったところだろう。そして腹が膨れたこいつはアグス王子を殺したわけだ。
つまりこいつの中にいる幼女はユーフィの妹だけの可能性が高い。ならば俺は見つけられる。ロリコンは本能で幼女を感知する。そこに毒や暗闇など全くの無意味だ。
「む? なんだこいつは!? どうしてそんな迷わず真っ直ぐ進めるんだ!?」
どうしてだと?そんなものは決まっている。
「俺がロリコンだからだ~!」
俺の手が確かに誰かを掴む。姿は見えないがこの感じ…間違いなく幼女だ。
「テレポート! サニーラ王国、宝物庫!」
俺は転移すると身体中、毒だらけで体から煙が出ていた。幼女を救うのに夢中で気にしなかったが、滅茶苦茶痛い…だが、この腕の中には黒髪の幼女がいた。
「ネーヤ!」
どうやら正解みたいだな。俺は立ち上がり、ユーフィの元に向かう。
「貴様、今度は俺の中から魔法を! お前は一体なんなのだ!」
ネーヤを心配するユーフィを荷物で挟む。流石に毒がついた体でユーフィに触れるわけには行かないからな。
「俺か? 俺はロリコンだ! ワールドテレポート!!」
俺は荷物とユーフィ、ネーヤごと異世界転移した。これが俺の切り札だ。ネーヤを助け出した以上あの魔王に用はない。この勝負、目的を達成した俺の勝ちだ。
「完全に姿を消しやった…なんだったんだ? あいつらは? ロリコン?」
魔王ダジールには到底理解出来ない言葉だった。
新たな異世界に転移した俺は深い森の中で首から下が地面に埋まっていた。激痛で意識が遠のく中、空を見る。
「きゃあああああ!?」
そこには純白のパンツがあった。そして小さなお尻が俺の顔にヒットする。これで死ねるなら本能だと俺は思い、意識を失った。
その頃、フィーネたちがいる天界では一部始終を見ていた。
「…おい。何が魔王を討伐するだ? 思いっきり異世界に逃げてんじゃーか!」
「えぇええ!? 私に怒られも! ピット、どういうことよ!」
「僕は彼が魔王討伐に向かったとは言ってないよ? 魔王の元に向かったとは言ったけどね。ぷぷ」
「う、裏切り者~! あぁああ~! 待って! 連れて行かないで! 私は何も悪くな~い!」
フィーネがその後、どうなったかは神のみぞ知る。
これで第一章は終わりとなります。第二章以降も考えておりますが現時点では更新日は未定です。
色々な意見があると思いますので、それを見て続けるのかどうか判断したいと思います。