ユーフィの闇と決断の時
翌朝、二人でご飯を食べる。因みに料理は俺が作った。ユーフィはお城生活で料理などしたことないので、こればっかりは仕方が無い。
興味はありそうなので、いつの日かユーフィの手作り料理を食べれる日を心待ちにしていよう。するとご飯を食べ終えたユーフィが思い詰めた様子で話しかけてきた。
「あの…昨日の夜、誰と話していたんですか?」
おい、こら。女神もどき。思いっきり巻き込んでいるじゃないか。この世界の神様に死刑を要求した。
「あぁ…」
「…私に話せないことなんですか?」
子供というのは大人の隠し事には本当に敏感でそれを隠す行為は嫌うものだ。これは話すしかないな。全責任は女神もどきにある。
「わかった。俺のことを全て話すよ。ただしかなり馬鹿げた話だから信じる信じないはユーフィが決めてくれ」
「わかりました」
「まず俺はこの世界の住人じゃない。俺は自分の生まれた世界で一度死に自称女神に出会った。昨日の話し相手はそいつだ」
「…はい?」
そうなるような。首をかしげる姿が可愛くて良かった。話を続けよう。
「俺はもう一人の神様から異なる世界に転移する能力を授かって、この世界に来た。俺とユーフィが最初に出会ったのはその時だ」
「…え? ちょっと待ってください。そんな能力というか魔法があるんですか?」
「あるんだな。これが…因みにアポーズはその副産物のような魔法だ。他にもランダムテレポートというものも使える」
「そんな…そんなに色々な魔法を使えるなんて」
どうやらこの世界では魔法は一人一つが普通らしい。三つもある俺は完全に異常なわけだ。
「これがおおよその俺の話だ」
「では、昨日のサ二ーラ王国で魔王が復活したという話は事実なんですね?」
「あの女神もどきが嘘を言っていなければ事実だな」
「…あの、私にも話していないことがあったんです」
ん?なんだろう?このタイミングで話すことなんて何かあるか?
「実は私には妹がいるんです。名前はネーヤと言うんですけど」
何だと!いや、この流れはもしかして!
「ネーヤは私より早くアグス王子の元に嫁がされ、今はサ二ーラ王国にいるはずなんです」
なんてこった…緊急事態だ!ユーフィの妹。つまりユーフィより更に幼女の大ピンチとなってはもはや俺は手段を選ばないぞ!
「ピット聞こえるか!」
『はいはーい。お仕置きされているフィーネの姿に大爆笑中のピットだよ』
「そんなことはどうでもいい! ユーフィリア王女の妹は無事かわかるか?」
『ん? ちょっと待ってね。えーっと…生きてはいるね。ただ魔王に取り込まれているみたいだ』
俺は助けることは可能か聞く。
『不可能ではないかな? ただこの魔王は体が強力な毒の瘴気で出来ているから助け出せても命の保証はしないよ。取り込まれた子も助け出そうとする君の命もね』
それは脅しのつもりか?生憎ロリコンにそんなものは通用しない。幼女を助けるためなら命ぐらい捨てられる。それがロリコンであり、俺だ!
『あはははは! 君はやっぱり面白いね! 今まで神様に言われたからとかくだらない正義感で魔王に挑む勇者や英雄をたくさん見てきたけど、そんな理由で魔王に挑む人間は君が初めてだよ!』
「それは人選ミスだな。今度からはロリコンをもっと選ぶべきだぞ」
『検討するよ。さて、こうなると急いだほうがいい。毒は時間が経つほど、回っていくからね。早くしないと手遅れになってしまうよ』
マジか…ここからだとサ二ーラ王国まで二日はかかるぞ、どうする?イチかバチかランダムテレポートを使うか?いや、逆に時間がかかる可能性のほうが遥かに高い。
『テレポートを使えばいいじゃん。君、使えるようになっているよ』
またこの流れかい!ゲームみたいにインフォが何かで来てくれよ。もっと早く使えたら、着替え中の幼女の所にテレポートするのに…え?それは犯罪じゃないかって?生憎証明されなければ全て事故だ。俺が初めてユーフィと出会った時と同じ。
「えい! 今、変なことを考えてました! それよりもネーヤはどうなるんですか」
杖で叩かれた。なんか俺が頭で考えたことを読まれるようになってきたな。それにしても妹を心配するユーフィの可愛くてグッドだ。と本当にそれどころじゃないな。
「テレポートは好きな所に転移する能力であっているか?」
『正確には思い浮かべた場所に転移する能力だね。テレポートの後に正確に場所を言うとほぼ成功するかな?』
なるほどな。それなら俺の転移先はアグス王子の部屋か宝物庫の中の二択。この場合は宝物庫の中しかありえない。男の部屋など俺の脳内から即刻削除されているからな!
「あの…もしかしてサニーラ王国に行くんですか?」
「あぁ。今すぐ行く。ユーフィはここで」
「私も行きます!」
「いや、危ないから」
ユーフィが涙目で訴えてきた。
「私は! …王位継承権が妹よりあったから最後までお城にいたんです。妹が連れて行かれる時の顔は今でも覚えています。あの時は何も出来ませんでした…だからこそ今度は助けたいんです! お願いします! ケーゴさん」
はぁ…ユーフィも闇を抱えていたんだな。それもこれも全てダメな親なせいだ。子供に闇が生まれるのは全て大人が原因だ。俺も含めてだが、本当に大人というのは罪深い生き物だよ。
ここは俺が折れるしかないな。ここで許可しないとユーフィの闇が消えることはないからな。
「わかった。ピット、二人のテレポートは可能か?」
『直接か間接的に繋がっている状態でテレポートを使えば可能だよ。ただ余分に力は使うけどね』
そのぐらいロリコンパワーでどうとでもなる。幼女と手を繋いでいるロリコンは世界最強だからな。因みに手を離させると死にたくなるので、最弱クラスに落ちる。
「行けるんですね! では、準備してきます!」
「あぁ。旅に必要な荷物を全部持って行くぞ」
「え? 武器や薬だけじゃダメなんですか?」
「ダメだ。下着や服とか全部持って行く」
俺たちは魔王と戦うために準備を終えた。完全に冒険への出発状態だ。そして俺はユーフィに旅の注意事項を教える。これを教えておかないと取り返しが付かないことになる。
「魔王と戦う前にこれだけは約束してくれ。魔王と戦うのは俺だけだ。ユーフィは何も言わず、後ろに下がっていてくれ」
「え? でも」
「約束してくれないと俺はロリコンとして君を連れて行くわけにはいかない」
「…わかりました。約束します」
渋々だな。うむ…保険を掛けておくか。
「もし破ったら、寝るときはずっとセクシーランジェリー姿な」
「わかりました! 絶対に破りません!」
そんなにも嫌か。
「それじゃあ、いくぞ」
「はい!」
「テレポート! サニーラ王国、宝物庫!」
俺たちは転移した。
その頃、フィーネはというとくすぐりマシーンの餌食になっていた。
「あははははは! と、止めて~! ひゃははははは! もうダ…きゃははははは! 魔王討伐に…あぁああ~! 動い…あははははは! たからぁ~!」
とても女神としての姿はそこには無かった。