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無法地帯?からの脱出

作者: 神名代洸

「ここは何処だ?」


発した言葉が建物内を反響する。

頭が痛い。そう感じ片手で頭部に触ると濡れた感触があった。出血でもしているのか?

僕はその場から立ち上がり周りを見回してみるが、窓がない。

あるのは重そうな鉄の扉だけ。

鍵がかかっていた。

逃げ出すためにはどうしたらいい?

わからない…。

わからないなりに頭で考えてみる。

痛む頭は冴えていた。

部屋にあるのはパイプ椅子1つとハンガーが1つ。他には何もない。

まずどうやったら扉を開けられるのか。ガチャガチャと何度も回してみる。

昔何かで知った方法はクリップを曲げ直して鍵を開けるということ。

ただ、この方法で確実に開く保証はない。

そもそもクリップが見当たらない。

ハンガーでは果たして開くかどうか。

痛む頭を押さえながらハンガーを壊す。しかしなかなか思う様に壊れない。イライラする…。派手に床に叩きつけてみた。すると木の枠が大きく割れ、金具が顔をのぞかせた。その金具をグニャグニャになるまで動かし続ける。思う様に動く様になったのはしばらくしてから。

二つに折り曲げ鍵穴に差し込むことが出来た。あとは回るかどうかだ…。

グルッ。……ガチャッと音がして鍵が開いた。

僕は思わずガッツポーズをしたが、まだ出られたわけではないので息を吐いて集中した。果たしてその扉の向こうにあったのは…、だだっ広い部屋だった。よく見ると僕がいた部屋はベニア板で作られた箱の様な場所だったのだ。

どうりで狭いはずだ。

それでも気持ちを切り替え、再度新しい部屋のドアを開けようとした。今度はなぜかすんなり開いた。でも誰もいない…。

廊下らしき場所にも電気は付いているが人一人も立ってもいなかった。

気持ちが悪くなった。

不気味すぎる。

そんな時何処からかアナウンスが聞こえてきていた。



【ただいまからこの場は無法地帯になります。】

「ハァ?何?それ…。何だよ、無法地帯って。」

僕は痛む頭を押さえながら関係者とおぼしきアナウンスをした女性に詰め寄ったが、返答はなかった。そりゃそうだ、いきなりそんなこと言われて、はいそうですかと納得する奴なんていない。おかしいんじゃないか?

だが、何度問いかけても返答はない。カメラはついてるからこちらの映像は見えてるはずなのだが。

一方的に言うだけの様だ。

僕は諦め、何か武器になりそうなものを探した。

しかしこういう時に限ってなかなか見つからない…。仕方がないので上着を一枚脱ぎ、片手にグルグル巻きつけた。

ボクシングスタイルをとりつつ武器を探し続けた。

その時何処か遠くでガッシャーンと何かが割れる様な音を聞いた気がした。ビクッとしてしまった。突然の事で反応が遅れた。


でも誰もいない…。


不気味なほど静かだ。

ファイティングポーズをとりながら前へ前へと少しずつ進んでいく。

緊張で汗が顔を伝った。


一瞬何かの気配を感じた気がした。


さっと何かが通った感じがしたのだ。

僕と同じ様な人がいるのか?と首を傾げたが、何も情報が入ってこない為わからない。

とりあえず音がした方から離れようと逆方向へと歩いていく。すると今度は不気味な部屋に出た。

その部屋は真っ赤に染まっていた。

まるで血の様な色だ。

気持ちが悪い。


ガッシャーン!また音がなった。さっきよりも近く感じた。こっちに向かってる?まさか…な。

部屋を見回してみた。ここには机があった。じゃあ、引き出しに何か入ってないか?そう思った僕は順番に引き出しを開けていく。しかし何もない。最後の一つになってしまったが、出てきたのは小さなナイフ1本だった。

これで一体どうしろというのだ?

僕は考えた。

でも答えは出てこない。

他にはないかと引き出しをすべて開けてみたが何も無かった。

ならここに陣取って、誰かやってきたらこの引き出しを使ってやりあうことになるかもしれないと思い机を一人で引きずりながら移動させた。

その間も音の距離は近くなる。

胸の鼓動が早くなった。

緊張で手が震えた。

一体誰が?

まだ答えは出ない。


ペタペタと歩く音は聞こえてくるが、静かだ。他にはなんの雑音も入ってこない。

ドア越しに緊張した僕は立っていた。片手には引き出しが握られている。万一を考えナイフはポケットに入れている。片手はポケットに突っ込んで…。


音が止んだ。歩いている音がしない。

まさか、…ここに向かってるのか?

何故?

この真っ赤な部屋は何を意味しているのかは知らない。だが、外にいるやつにとって何か意味があるとしたら?

唾をごくりと飲み込んだ。

ドアノブが動き始める。

グルグル…。

そしてガチャっと言ってドアが開いた。

「うおー!」

僕は叫びながら外のやつに向かっていった。

だが、おかしなことに誰もいない。

確かにドアノブは動いていた。でも、ドア付近にも誰も立ってはいない。

あたりを見渡したが人の気配が無かった。

「何だったんだ?一体。」

わけがわからない。

確かにドアは開いた。でもそこに人はいなかった…。

もしかしてこれが幽霊ってやつか?などと思い、初めて体験した僕は震えだしてしまった。

今までそんな体験した事は一度だって無かった。それがここにきて立て続けに起こったのだ。びっくりする方が普通だ。


周りをぐるっと見回すが、特に変わったところはない。…とその時背後に誰かの気配を感じた。サッと振り向くも誰もいない。鼓動が早くなる。



怖い怖い怖い。


正直そう思った。無法地帯といったアナウンスは気になるがそれよりも霊の存在の方が気になった。

すぐその場から逃げ出したくなり僕は慌ててその部屋から逃げ出した。

走って走って走り続けた。

自分の吐く息だけが大きく聞こえた気がした。

静かな廊下は僕の靴音だけを響かせ反響していた。


結局人一人出会っていない。無法地帯とは何なのかもわからないまま時間だけが過ぎていった。つい振り返りたくなるが、振り返っても誰もいない事は僕が1番分かっていた。

それでも振り返ってしまった。

そこには小さな少女が座っていた。

ついさっきまでは誰もいなかった場所にだ。体は透けて見える。

少女だからだろうか?怖さは無かった。けれどその少女の顔は分からない。床に向いて何かを書いている様子がわかる。

何を書いているのかと不思議に思い覗きこんだ時顔が男の人だったので驚いた。

「うわっ。」

思わず尻餅をついてしまった。

少女の体で男の顔には驚いてしまったが、それ以外は特に何も変わったところはない。

でも気味は悪い。しかも能面のように無表情。

「ギャッ!」

叫んだと同時に手にナイフを持って目の前の霊に向けて突き出した。霊なんだから感触なんかないはずなのになんとも言えない感覚があった。

「な、何なんだよ?一体。なんか仕掛けでもあるのか?」恐怖を飲み込んで周りを見回す。けれども僕以外は目の前にいる少女?しかいない。


「お兄ちゃん、何でここにいるの?」

「えっ?」

僕は頭が真っ白になっていた。

霊から声をかけられるなんて…それを聞くことができたのにも驚きだ。

「私と遊ぼ?」

「な、なに、して遊ぶのかな?」

「うんとねー、えっとねー、脅かしっこ。」

そう言って少女はフットその場から消えていなくなっていた。

僕はどうしたものかと考えたが、まずは遊ぶことよりもここから抜け出すことを優先しようと考えた。けれども少女はそうはさせてはくれなかった。

突然目の前に現れたかと思うとパッと消えてしまう。それを何とか捕まえようとするも手は空を切るだけ…。

しかし、触れ合った場所は熱かった。

それからは逃げることに専念する。逃げても逃げても少女は追いかけてくる。

怖いとしか言えない。

半透明の少女が追いかけてくるのだ。恐怖という単語が普通だろう。

徐々に少女の顔も変わりつつある。

少女の顔から男の顔へ。

ぐにゃりとしながら顔を変形させるので気持ち悪いとしか言えない。

「く、来るな!」

それ以外の言葉が出てこなかった。


「出口はどこだ〜?」

「そんなのないよ。あっても教えないけどね。」クスクス言いながらも表情を変えない顔が怖い。

だんだん般若のような顔になってくる。

逃げよう。

とにかくここから逃げよう。

そう思い、少女をその場に残して走り出した。

幽霊だから関係ないか。などと頭の片隅に考えが巡ったがたいして気にもしなかった。

ドアというドアを見つけ出しては片っ端から開けていく。あかない場所は例の手製の鍵で開けてみたりなどした。

どれくらい経っただろう…生も根も尽き果ててその場にへたり着いた。

「だから言ったでしょ?無駄だって。」

いつの間にか直ぐそばに女の子がしゃがみこんでいた。ああ〜そうか、霊だから簡単に見つけられるんだ。

変なところで納得してしまったが、何とかしないといけない気持ちに変わりはなかった。

その時ふと思った。

彼女はどこから始めきたのだろう?

たしか…そう、あっちだ。

まだ探していない場所だった。

僕がそっちに走り出すと少女は怒りの形相で追っかけてきた。ビンゴらしい。

彼女が出てきたであろう場所のドアを思いっきり開けてやった。

そこにあったのは…首を切断された女の子の体が椅子に縛り付けられていた。

首は直ぐ近くの机に乗せられていた。

血が流れ伝っていた。

顔は?見えない。

霊の顔は男の顔だった。じゃあ、生首の顔はどうなっているんだ?恐怖が興味に負け、顔の近くまで歩いて行った。

ゴクリと唾を飲み込んだ。

果たしてそこにあったのは…表皮を剥かれ血だらけになっている顔があった。

机にはマスクのように皮膚が置かれていた。

そのあまりの気持ちの悪さに思わず吐きそうになった。その時、カツッ、カツッ、カツッという足音が聞こえた気がした。

慌てて僕は隠れられそうな場所を探した。

1番いいのはこの部屋を出ることだが、部屋の直ぐ近くで音がなったのだ。出られるわけがない。

仕方がないので手近な机の陰に滑り込んだ。

しかし、血の匂いだけはどうにもならない。

気持ち悪いのがあって、吐きそうになるが、何度も堪える。その間入ってきた人物は何も言葉を発することもなくただ黙々と作業を始めていた。


そろり、そろりと床を這いつくばって距離を稼ごうとする。

ニアミスが何度もあった。

しかし気づかれることはなかった。

ただ、少女の体に何かをしていたことはわかる。ちらりと背中が見えたのだ。

暫くすると満足したのか部屋から出て行った。

僕は冷や汗をかきながら何が起こったのかを見てみようと少女の体に近づいて行った。

少女の体には何本もの紐が巻かれていた。

何をしようとしていたのかはわからないが、関わり合いたくなかったのでそれ以上は見なかった。

出て行った部屋のドアが出口への扉だと踏んだ僕はゆっくりとドアノブを回した。カチャッと大きく響いた気がして慌てて辺りを見回したが誰もいない。

ホッとしてドアを開けるとそこにあったのは開けた町だった。

ただ建物は崩れているものとかあった。何かあったようだ。

新鮮な空気を吸いついさっきまでいた場所を振り返った。


そこにあるべきものが何もなかった。

そう、建物もドアも…。

じゃああの少女は?

無法地帯は何だったのかわからない。

ただ言えるのはここは何処だ?って事。

地震でもあったかのように建物が壊れていたのだ。


じゃあ、さっきまでの怖い思いをしていたのは夢だったのか?わからない事だらけ。

でも怖い想いだけはしなくて済んだからよしとするか…と思っていたら何処からか声が聞こえた気がした。

あの少女の声だ。


きっと何処かで笑っているのだろう…。

耳について離れなかった。そう、まるで耳の直ぐそばで話してるかのように…と慌てて振り返るが少女はいなかった。

もう怖い想いはたくさんだ。

僕はその場から逃げるように走り出した。




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